作品名「夏の終り」
みたいな写真が撮れたので紹介しておきます。クマゼミのメスが庭のヤナギの木にとまっていました。逃げようともせず、産卵をした後なのかもしれません。
生きています。先週の土曜日から観察会やら調査やらで7連続野外という状況でしたが、なんとか乗り越えました。8月は忙しすぎまする。。
ということで県外某所で調査などもしていたのですが、移動中にみかけた湿地帯です。見た瞬間に私のスパウザーじゃなかったスカウターがかなりの戦闘力をはじき出しました。とっさに運転者に「とっ止めてくれェェェーー!!」と叫びます。
私の目に狂いはありませんでした・・・
ミズオオバコの楽園だったのです。ああ、素晴らしい。こういう発見があるから湿地帯調査はやめられません。
これも別の水田脇の湿地帯。ヒメガムシが爆産していました。ものすごい数でした。超レアというような種はいませんでしたが、それでもイモリやドジョウもいて、かつて当たり前にあったであろう水田脇の生物溢れる湿地帯を体験することができました。こんな当たり前のはずの湿地帯もすでに身近な存在ではありません。なんとかしたいものです。
先日に観察会で出会った少年から、某市内の水田脇の水路にデンジソウの類が自生していることを教えてもらいました。この市ではこれまで記録がなく、貴重なものだと思いましたので先日見に行くと・・
まったく水がなく、枯れかかっていました。これはただごとではないということで、某市環境部局の方に相談して耕作者の方と連絡をとり、採集の了解を得て本日救出を行いました。
ここはもともと水田脇の水路のはずですが、水がなく、しかも水田のはずの畑は大豆です。話を伺うと、今年極端な少雨だったために水稲をあきらめて大豆にしたとのこと。その際に毎年はしない除草剤を畦に撒いたとの話を聞きました。なんという不幸・・。耕作者の方もそこに希少種があるとはまったく知らなかったとのことで、2019年まで生き残ったのはものすごく奇跡的であったことがわかった一方で、もうそれも今年で絶えてしまいそうです。
役所の方と手分けして、直接除草剤がかかってなさそうな場所からいくつか採集を行いました。きれいに洗って、栽培を試みたいと思います。なんとか持ちこたえて、増えて欲しいのですが・・・。デンジソウかナンゴクデンジソウかはまだわかりません。わかるくらいまで生育して欲しいです。ちなみに両種ともその減少要因に除草剤の影響が挙げられており、除草剤に極端に弱いことが知られています。
ということで急な話にもかかわらず迅速に対応いただいた役所の方々、また快く採集許可をいただいた耕作者の方、どうもありがとうございました。
お盆ですが色々な事情により調査でした。お盆に水に近づいてはいけない、という話が各所にある中で、細心の注意を払って行います。
天気はよく、美しい海岸です!誰もいません!!
ヒラメです。かなり久しぶりにみました。かっこいいです。
左上がコショウダイ、その下がカワハギ、上がクサフグ、右下がメジナです。
フレリトゲアメフラシでしょうか?
場所を変えて、砂浜へ。シロギスです。この魚もなんだか久しぶりにみました。カマツカぽくて好きです。
サヨリに寄生虫がついていました。サヨリは標本にするべく持ち帰ったものですが、背中に寄生虫ついてるなと見ていたら口からも何かが出てきました。背中から出ているのはカイアシ類のサヨリイカリムシモドキ、口から出てきたのは甲殻類のサヨリヤドリムシではないかと教えてもらいました。どうもありがとうございました。色々な生き物が複雑に関係しあって暮らしています。生物多様性です。
Tominaga, A., Matsui, M., Tanabe, S., Nishikawa, K. (2019) A revision of Hynobius stejnegeri, a lotic breeding salamander from western Japan, with a description of three new species (Amphibia, Caudata, Hynobiidae). Zootaxa, 4651: 401-433.
分類学的研究が進展するサンショウウオ類ですが、今回コガタブチサンショウウオが再検討され、4種に区別できることが報告されました。すなわち、3新種の記載です。本研究によりコガタブチサンショウウオは九州固有種であることが新たに判明したということになります。
コガタブチサンショウウオHynobius stejnegeri Dunn 1923
マホロバサンショウウオHynobius guttatus Tominaga, Matsui, Tanabe & Nishikawa, 2019
ツルギサンショウウオHynobius tsurugiensis Tominaga, Matsui, Tanabe & Nishikawa, 2019
分布:四国(徳島県(剣山))
イヨシマサンショウウオHynobius kuishiensis Tominaga, Matsui, Tanabe & Nishikawa, 2019
いずれも遺伝子と形態から区別できることが示されています。
分布域全域をカバーした詳細な分子系統地理研究でもある本論文は、本種群の分布域形成過程に興味深い示唆を与えています。遺伝的解析としてミトコンドリアDNA16SrRNA領域の解析と、アロザイム分析の両方を行っています。これらの結果、コガタブチサンショウウオはいずれの解析でも北部と南部で明瞭に区別できることが明らかにされています。九州の地史を考える上で重要な情報です。
また、四国にはツルギサンショウウオとイヨシマサンショウウオの2種いることが明らかになりましたが、この2種の成立の経緯はかなり複雑そうです。いずれも遺伝的には明瞭に区別できる2種ですが、16SrRNAの領域ではツルギサンショウウオは本州のマホロバサンショウウオの方に近縁であり、イヨシマサンショウウオには種内に明瞭に区別できる2集団が検出されています。ところがアロザイム分析ではツルギサンショウウオはイヨシマサンショウウオやコガタブチサンショウウオのほうに近く、また、イヨシマサンショウウオの2クレードはひとまとまりになることが示されています。イヨシマサンショウウオの2クレードは形態でも区別ができないことから、異なる遺伝的特徴をもった2集団を内包する種として記載するという形がとられています。過去の複雑な分布域の隔離、移動、交雑などが関係しているものと思われ、非常に面白いです。
ということで日本列島の生物多様性の奥深さはまだまだ底が見えません。日本列島の本当の凄さは、まだまだわかっていないことの方が多いのです。それと同時に各地域のあらゆる生物の個体群も「同種だから」といって保全をあきらめてはいけないことがわかります。ましてや「同種だから」といって他産地産の個体群を放流などすることは、単なる環境破壊であるということまで、見えてくるかと思います。少しでも多くの自然遺産を、後の世に残していきたいものです。