オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

休日なのに仕事してます!偉い!といっても昔に採った水生昆虫の同定作業とリスト作成なので、仕事なのか趣味なのかわかりませんが・・

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2008年8月に訪れた南西諸島某島。素晴らしい湿地帯の風景。

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こちらも、良い感じ。

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左上がコガタノゲンゴロウ、隣がコガタガムシ、真ん中がヒメフチトリゲンゴロウ、右下がトビイロゲンゴロウ、その隣がコガタノゲンゴロウです。12年前、あれらの湿地帯には確かにたくさんの水生昆虫がいたわけですが、近年壊滅的にいなくなってしまったのだそうです。信じられません。ということでその変遷をまとめた論文を共同で進めています。日本の湿地帯はどんどん、確実に、悪化しています。なんてことのない水生昆虫がいなくなる、ことが積み重なればいつか人間社会にも悪影響は出てくるのではないでしょうか?ウナギが採れない、アサリが採れないというのは、本当にこうした積み重ねと無関係なのでしょうか?考えて、解決に向けて、取り組まねばいけない時期に来ているのだと、私は思います。そしてやっぱり誰も興味がないという状況はよくないのです。興味をもってもらうところは重要だと思うのです。そうしないと守ろうとも思わないでしょう。その存在を、世間に見せ続けていきたいと思います。

 

日記

今日も湿地帯へ。

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今日の湿地帯は某渓流。誰もいません。素晴らしい。

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サワダマメゲンゴロウの楽園を発見しました。ざくざく採れます!こんなに見たの久しぶりです。記録標本用に少数を採集して、あとは放逐。あまり遊泳能力が高くなさそうな感じで岸際の落ち葉の間などに潜り込んでいきます。

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瀬ではマルヒメツヤドロムシが。このほかにアカモンミゾドロムシとミゾツヤドロムシ。このあたりの上流域のいつものメンバーです。

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砂防ダム上のよどみに何故かミズカマキリがいました。けっこう標高の高い場所でしたが、飛んできてそのまま居ついているのでしょうか。

今日は本当はマルガムシを採りたかったのですが、狙うとなぜか採れません。ものすごくいそうだったのに・・・

 

日記

今日は休みだったので、少し川にいってきました。セスジダルマガムシOchthebius inermisの採集方法を特別に公開します。

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河川の中流域の河川敷にある緑藻が繁茂した水たまりを探します。流水ではないですが、止水でもない(微妙に水が流れ込んでいる)ような場所が良いようです。

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そうした場所の緑藻を丁寧にちゃぷちゃぷします。そうすると浮いていきます!浮いてきたらそっと指を差し出すと、つかまってきます。泳ぎはゆっくりなのであせる必要はありません。

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採れました!カッコいい!!この場所は15年ほど前から折々来ている場所で、今回は5年ぶりくらいに来ましたが、あまり変わっておらず、相変わらずセスジダルマガムシも生息していました。一般的に一か所での個体数はあまり多くないので、乱獲はしないようにしましょう。限りある生物資源を、大切に!

日記

調査でした。

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カマツカ3匹。

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イカワ。

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とりあえずギンブナ。

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大きなイトモロコ。

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ゴクラクハゼです。

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こちらはドンコ。

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なぜか川にいたコブハクチョウ。侵略的な外来種という側面もあります。

調査目的の種は死体のみでした。まだいるということはわかったので、再度挑戦したいところです。

 

 

 

 

 

 

 

日記

色々と3月の予定が狂いに狂いまくっていますが、一方でリスクの少ないすべき仕事は淡々とこなさなくてはなりません。というかやはり湿地帯なしではしんでしまいます。

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今日の湿地帯。一人で車に乗って調査場所へ出かけ、この湿地帯には今日私以外の人類はいませんでしたので、あのウイルスにやられるリスクはほぼゼロといえましょう。ただし溺死のリスクは高いので、注意が必要です。不安にかられるのは人間としてやむをえませんが、こういう時こそ冷静にリスクの高低を判断していくことが重要です。おぼれてしまっては何にもなりませんので、ここではウイルスよりも溺死に注意するということです。

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コオイムシです。20年前は県内ほとんどいなかったのに、ここ数年、コガタノゲンゴロウやウスイロシマゲンゴロウと歩調をあわせるようにじわじわと増えています。

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ヒメミズカマキリです。ミズカマキリより小さくて、ため池などやや水深がある安定した止水域を好みます。

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ヒメガムシ(右)とマメゲンゴロウ(左)です。F岡県内では屈指の普通種ですね。

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ルイスツブゲンゴロウです。これは少ないですがこの池にはいつもいます。

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今日の目的を確認できました!コバンムシです。真冬にどういうところにいるのか、だんだんわかってきました。こうした知見を保全に生かしたいです。

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これは別の場所。昨年に穴を掘ってカスミサンショウウオの産卵場整備をしたところです。

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狙いどおり卵がありました!今年もカスミサンショウウオが繁殖できたようでうれしいです。このまま干上がらずに順調に成長してくれるとよいのですが。。

 

論文

Lopes-Lima, M. ほか(2020)Freshwater mussels (Bivalvia: Unionidae) from the rising sun (Far East Asia): Phylogeny, systematics, and distribution. Molecular Phylogenetics and Evolution, 146: https://doi.org/10.1016/j.ympev.2020.106755

www.sciencedirect.com

極東アジア地域のイシガイ類についての網羅的な分子系統地理&分類に関する論文です。非常に多くの新知見が含まれた超大作です(著者も36人)。本論文では日本産種を含む4種が新種記載されています。内容は膨大なので興味のあるところだけ、というか九州産についてメモです。

九州産のイシガイ類は現時点では10種ということになりそうです。以下その10種と学名。
・フネドブガイAnemina arcaeformis (Heude, 1877)
・和名なし(=旧タガイ) Beringiana fukuharai Sano, Hattori & Kondo, 2020
・ドブガイモドキ Pletholophus reinianus (Martens, 1875)
・ヌマガイ Sinanodonta lauta (Martens, 1877)
・キュウシュウササノハガイ Lanceolaria kihirai Kondo and Hattori, 2019
・ニセマツカサガイ Inversiunio yanagawensis (Kondo, 1982)
・和名なし(=旧イシガイ) Nodularia douglasiae (Griffith and Pidgeon,
1833)
・オバエボシガイ Inversidens brandtii (Kobelt, 1879)
カタハガイ Obovalis omiensis (Heimburg, 1884)
・マツカサガイ Pronodularia japanensis  (Lea, 1859)⁠

多少名前は変わりましたが、ひとまず認識していた体系に変化はないようで、安心しました。和名なしのものは旧タガイと旧イシガイがそれぞれ細分化(=適切な形に整理)という理解で良いと思います。

旧タガイ類は本論文では4種に区別されることが示されていて、北海道にB. beringiana(チシマドブガイ)、東北地方から中国地方にかけての本州日本海側にB. gosannensis(今回新種記載)、東北地方から関東地方にかけての本州太平洋側にB. japonica(タガイ)、本州(近畿・北陸以西)・四国・九州にB. fukuharai(今回新種記載)が自然分布するようです。それから旧イシガイは主に東日本にN. nipponensis、西日本にN. douglasiaeが自然分布するようです。このうち前者は日本固有種で、後者は朝鮮半島から中国大陸に広く分布するようです。これらの分布様式はいくつかの純淡水魚類の知見とも一致しますね。

それから在来かどうかよくわかっていなかったドブガイモドキですが、日本列島産と中国大陸産には遺伝的な違いがあり、本論文では日本列島産は在来の独立種と判断しています。それとマツカサガイも明確に3集団に区別できるようで、本論文では分類学的決定はなされていませんが、今後何らかの分類体系の変更がありそうです。

ということで形態での区別が難しいことから研究が遅れていたイシガイ類ですが、やはり、人類が予想していた以上に多様性をもった魅力的な生物であることがわかってきました。一方でその多くは絶滅に瀕しています。乱獲の問題もあります。生息環境(主に水路)の破壊も進んでいます。水系ごとにきちんと意識して保全していく必要があります。貴重な湿地帯生物として、もっと大事にしていかなくてはいけません。

 

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九州某所のドブガイモドキです。この論文によれば関東、近畿、九州北部、石垣島の4地域が分布域になっていますが、どれも在来・・ではないですよね。石垣島のはやっぱり外来でしょうか?九州北部は?誰か教えてください・・

日記

TOKYOに来ています。今日は以前より行きたいと思っていた某湿地帯を某氏にご案内いただきました。が、そこはまあ置いておいて、その中の清流でヒメドロムシを採った話です。

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里山の中に素晴らしい清流が!冬のTOKYOの清流といえば、やはりQ州にいないヨシトミダルマガムシを探索したいと、こうなるわけであります。時間がないというのに無理に採集を始めます。

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ホソヒメツヤドロムシZaitzeviaria gotoiです。

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マルヒメツヤドロムシZaitzeviaria ovataです。目的のものではありませんが、ヒメドロムシが採れたのでうれしいです。

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その後は勢い余って別の渓流へ。ヨシトミダルマガムシチャレンジを続けます!いそう!!

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結果として、いませんでした。そううまい話はありません。しかしマルガムシHydrocassis lacustrisがいました。丸くてかわいくて大きな(約7ミリ)渓流性ガムシです。ということで真冬でも水生昆虫は採れます。