オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Sano, I., Saito, T., Ito, S., Ye, B., Uechi, T., Seo, T., Do, V.T., Kimura, K., Hirano, T., Yamazaki, D., Shirai, A., Kondo, T., Miura, O., Miyazaki, J., Chiba, S. (2022)  Resolving species-level diversity of Beringiana and Sinanodonta mussels (Bivalvia: Unionidae) in the Japanese archipelago using genome-wide data. Molecular Phylogenetics and Evolution, 175: 107563.

www.sciencedirect.com

ドブガイ類の分子系統に関する論文です。大変な力作&大作で、日本列島におけるドブガイ類の全容がついに明らかになってきました。

この論文では形態で同定した標本について、ゲノムワイドな解析(ddRAD-Seq法)とミトコンドリアDNA(COI領域)での解析をそれぞれ行い、さらにその結果を比較することで、ドブガイ類の実体に迫っています。

結果はたくさんあるのですが、私が興味深く思ったところとして、ゲノムワイドな解析とミトコンドリアDNAでの解析でその系統関係が一部で大きく異なっていたこと、それでもタガイ属Beringianとドブガイ属Sinanodontaの2系統に大きく区別できる点が一致していたこと、一部で交雑が確認されていること、九州中南部の”ヌマガイ(=ドブガイ属の一種2)”が本州産と大きく異なり固有性の高い学名未決定種と考えられること、などです。特にCOI領域の解析だけでは種の区別が難しい、というのは塩基配列を用いた同定を行う上で重要な事実だと思いました。

 

ということで以下個人的メモです。

タガイ Beringian japonica (Clessin, 1874) ※本州(東部)
チシマドブガイ Beringian beringiana (Middendorlf, 1851) ※北海道
キタノタガイ Beringian gosannensis Sano, Hattori & Kondo, 2020 ※本州(青森~本州日本海側)
ミナミタガイ Beringian fukuharai Sano, Hattori & Kondo, 2020 ※本州、四国、九州
オグラヌマガイ Sinanodonta tumens (Haas, 1910) ※本州(琵琶湖淀川水系
マルドブガイ Sinanodonta calipygos (Kobelt, 1879) ※本州、四国
ヌマガイ Sinanodonta lauta (Martens, 1877) ※北海道~九州(北部?)
ドブガイ Sinanodonta woodiana (Lea, 1834) ※本州(外来種
ドブガイ属の一種1 Sinanodonta sp. 1 ※本州(東部太平洋側)
ドブガイ属の一種2 Sinanodonta sp. 2 ※九州(中南部?)

九州のドブガイ類についてはもう少し解像度の高い情報が欲しいところです。今後の研究の進展が楽しみです。

これは遠賀川水系。これがヌマガイかな・・

これは矢部川水系。ミナミタガイだろうか・・うーむ・・ 修行します・・・

日記

県内でも宿泊すると飲酒できて良い。しかし感染症もあり遠出は避けたい。ということで一泊二日で北九州市に旅行に行きました。旅程は「北九州市いのちのたび博物館」>>「魚部カフェ・バイオフィリア」>>「餃子工房你好田町店」>>「小倉リーセントホテル」>>「小倉城」>>「北九州市立文学館」>>「到津の森公園(動物園)」というものでした。

まずはいのちのたび博物館。夏休みの昆虫展を開催中でした。カブトムシやクワガタムシ、チョウに紛れつつそこかしこに水生昆虫の存在を感じる良いものでありました。感染症対策のためWeb事前予約制です。次いで常設展も。化石も身近な自然も歴史もよくまとまっていてかなりマニアックでお勧めです。

 

北九州市小倉北区の魚部カフェ・バイオフィリアへ。

名物ドジョウ塩焼きを食べることができました。おいしいです。ジョウ塩焼きを出す異色のカフェ、というだけでなくプリンとかコーヒーとか紅茶とかおいしいし、本もたくさんあって、きれいな水槽とか、九州大学の古い机や棚(九大什器)もあり、普通にカフェとして素晴らしいので皆さん行ってください。各地の作家さんの生き物グッズも充実しています。

 

夜は餃子工房你好田町店へ。金曜夜というのに心配になるくらいお客さんはいませんでしたが(というか我々だけ)、餃子含めておいしいです。

 

朝は小倉城天守閣は再建されたものですが、石垣とセットでお城が見られるのは、福岡県内では貴重です。お堀のうちいくつかは水草類がかなり良い状態で透明度が高く、ナマズが見えました。コイや猫やハトへの餌やり禁止の張り紙が多く、素晴らしいです。今後、野生生物と共存していく社会づくりを考えていく上でも、重要な部分と思います。

 

北九州市立文学館ではゾロリ展をやっていたので見に行きました。かなり充実していて面白かったです。ちなみにポン氏はかなりのゾロリリスペクトマンなのでかなり喜んでいました。この看板のキャラも全員説明してくれました。

 

最後は到津の森公園(動物園)へ。こちらは生態展示や動物福祉を重視した展示を強く打ち出していて、どの動物も楽しそうで良かったです。

久しぶりに行きましたが、「里のいきもの館」がレイアウトも、そこかしこにちりばめられた「生物多様性保全」へつながる明確な「意識」も、素晴らしかったです。動物園や水族館の展示は担当者の「表現」「作品」だと思うのですよ。しかし主役は生物であり、生物多様性保全や動物愛護やワンヘルスやSDGsなどの「社会的課題」に関する正しい知識も含め伝えなくてはいけない。そんな縛りの中でどれだけできるか。そこを見たいのですよね(マニアなおじさんの意見)。

 

ということで感染症が猛威をふるうなか、なかなか判断は難しかったのですが、割合に人の密度の少ないところを縫って、県内でポン氏の夏休みの一コマをつくることができたのではないかと思います。北九州市は福岡市に次いで九州第2の都市。見どころもたくさんあります。もし機会があればぜひお越しください。

日記

再び長らく更新できていませんでした。東京で開催されたイベント昆虫大学に行ったり、新種のドジョウを発表したりと色々ありましたが(これらは近いうちに記事にいたします)、その間に様々な仕事が降りかかっておりまして、完全に首が回っていませんでした。今日は完全オフということでポン氏と遊んでいました。

 

ということでヤマメの釣り堀に来ました。私はあんまり釣りをしないので、ポン氏も釣りを知りませんので、そういう勉強もかねて。ふむふむと説明を聞いて練り餌をつけて放り込みます。

 

何度か挑戦して見事に釣れました!魚のパワーに驚愕していたので良かったです。その後さらに2匹追加し、私も1匹釣って合計4匹で終えました。

 

ここでは釣ったヤマメを焼いてくれます。ポン氏は川魚を食べるのが好きなので、喜んで食べていました。こうしてヤマメを気軽に釣って食べることができるのも、安定して種苗生産し、安価に育て上げる水産の養殖技術、これがあるからでして、やはり素晴らしいものです。

日記

日記更新できていませんでした・・。猛烈に何かやることが降ってきています。ハチとかアリとかの仕事多いですが、何より、湿地帯調査シーズンにインしてしまっているのも大きいでしょう。その他、某虫の飼育の仕事や資料作成など事務的な仕事も多いのであります。

ということで3日連続湿地帯でした。今日はため池調査。目的のあれが確認できず超心配ですが、水位の問題だと思います。また来月・・。ちなみにこんな状態のたも網は湿地帯戦士あるあるかと思いますが、くっつくヒシの実がめんどいです。

日記

6月に突入しました。先週に庭の湿地帯の脇にあるミニ水田を改造したので記録しておきます。

庭の湿地帯、の手前にはミニ水田コーナーがあります(上の写真のシャベルがささっている部分)。この場所は造成当初からありましたが、単にシートを敷いているだけだったので、保水能力が低く、朝に水をいれても夕方には干上がってしまう問題がありました。そこで今回、コンテナタイプに改造したということです。

 

さっそく買ってきて、穴を掘って、仮配置した状態です。良い感じであります。写真右手前に雨水が流入する穴があるので、そこから水が流れ出てきて、水田を通って、池に行くというルートになります。

 

そこで入口と出口を、糸ノコとペンチで切って、低くしました。これでスムーズに水が入り、流れ出ていきます。

 

途中経過を撮り忘れました。埋めて、道から見える側に石を配置して石垣風に、そして湿地帯の周りの土壌を適宜ぺたぺたと張り付けて、自然な雰囲気に仕上げました。水の入口と出口は低くなっています。我ながら湿地帯の匠の技が光ります。天才かもしれない。

 

翌日に都合よく雨が降りまして、うまく雨水が流入し、新・ミニ水田は満水となっていました。高さ調整も万全だったようです。

昨年の種もみから稲の苗を育てていたので、さっそく田植えをしました。その後一週間、水の減りはほとんどなく、想定通り、保水能力のあるミニ水田が完成しました。

 

以下、本日の様子です。

稲は育っています。水田の手前、草が繁茂していて気に入らなかったので、さらに改造して、本物の水田ぽく、畦塗りをしました。

逆方向からみるとこんな感じです。石垣から続く畦塗りの水田。イメージに近いです。水は良い感じに保持されています。近くにカブトエビホウネンエビが毎年大量にわいている場所があるので、とってきて入れようと思います。

 

おまけ

先月つくったコンテナビオトープの記事↓

oikawamaru.hatenablog.com

庭の湿地帯を造成した時の記事↓ ミニ水田の原型がみえます。

oikawamaru.hatenablog.com

 

 

日記

今日はある希少水生昆虫の生息する池に調査に行ったところ、侵略的外来種ホテイアオイが数株浮上しているという信じがたい光景を目の当たりにしたので予防原則に従って見えるものはすべて駆除しました。

なんとなく池や川に放ってしまうこともあるかもしれませんが、環境破壊行為です。やめましょう。

 

池の岸辺にはアカガエル類がたくさん上陸して跳ね回っていました。このサイズだとちと自信がありませんが、ヤマアカガエルかな。

 

ふと見ると水面には何やらアワっぽいどるんどるんしたものが広がっていたので確認すると、やはりウシガエルの卵のうでした。これ以上増えると困るので、これも駆除しておきました。特定外来生物ですし、実際水生昆虫をたくさん食べてしまうので、やむをえません。

 

帰り際にコンクリート三面側溝を覗くと、上陸したばかりのニホンアカガエルの幼体が出られずに何匹も跳ね回っていました。この側溝じゃないと管理がしにくいんだよという意見はもっともだとは思います。しかし人類の英知を使って何かもう少し工夫できないものでしょうか。

ちなみにこのあたりにはヤマアカガエルニホンアカガエルが両方います。

日記

今日は調査でした。遠方からの淡水魚研究者2名と調査。久しぶりにお会いしたので昼の会食は生物多様性の恵みを堪能しました。

ワラスボとムツゴロウの刺身です。

エツの刺身です。

マジャク(アナジャコ)の唐揚げです。20年後も30年後も食べることができるようにしなくてはなりませぬ。そのためには、河川改修や水路改修の方向性を、今とは大きく変えていく必要があると思います。

 

これは昭和48年のとある資料です。公害という環境問題解決に向けた取り組みが進んだ時代です。この中に、有明海の食用貝類の水銀濃度を計測したデータが出ていました。問題ない値と示されているわけですが、この一覧の中の貝類の多くは現在、普通に食卓にあがる状況ではなくなってしまいました。つまり公害よりももっと大きな環境破壊がその後進展したということです。今後、我々は、生物多様性の破壊という環境問題解決に向けて取り組むべきであると思います。ここをきちんと解決しないと、わかりやすいところでは、食べ物の多くを失ってしまうことでしょう。