オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Nakajima, J., Onikura, N.(2014)Larval and juvenile development of Pike Gudgeon, Pseudogobio esocinus (Cyprinidae: Gobioninae).Ichthyological Research: DOI 10.1007/s10228-014-0436-5
9年前のデータをようやく世に出すことができました。カマツカ仔稚魚の形態変化です。西日本では超普通種であるところのカマツカですが、意外にもこれまでその仔稚魚の形態に関する情報は断片的でした。今回、飼育個体を用いて孵化直後から稚魚期までの形態変化、及び鱗の形成過程を詳細に観察し、初めて記載しました。
特にこれまで明確に認識されていなかったのが、体側や頭部に発達する長い棒状のクプラー(感覚器)です。中村(1969)では微妙にスケッチされていますが、特に言及されていませんでした。このクプラーは孵化直後には存在せず、孵化後2日目以降に急速に発達するという特徴があります。日本産の他のカマツカ亜科魚類と比較すると、カマツカの仔魚は孵化直後から眼に色素が付着し、胸鰭が大きいという点で特異的でした。クプラーの発達や体型変化の特徴とあわせて、カマツカが生活史のごく初期に活発に移動する可能性を示唆しています。

孵化後4日目のもっともクプラーが発達した時期を上から見た図。

鱗が完成した直後のカマツカ稚魚。
時間をかけてとった思い入れのあるデータだったので、世に出せて良かったです。