オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

生きています。年度末進行になってきて、講演仕事等も絡まりつつ慎重なスケジューリングで、図鑑の執筆などもしています。

最近リュウグウノツカイが打ちあがったなどというニュースをよく目にします。こうした珍しい海洋生物がたくさん打ちあがると、何等かの天変地異の前触れかと心配する方もおられるかもしれません。心配ご無用です。科学的に証明された例はありません。広大な海岸線をもつ我が国では毎日毎日人知れず、何等かの珍しい海洋生物が打ち上げられているものと思われます。例えば海岸に打ちあがった生物の研究などが時々なされると、決まって珍しい生物がリストアップされることからも、明らかです。そして、大陸の縁辺にあり常に動いている日本列島では、毎日毎日どこかで地震が発生し火山は蠢いています。一致することもあれば、しないこともあるでしょう。したがって気にするだけ無駄です。いざという時の備えはしつつ、図鑑などを読んで美味しいものを食べて日々過ごすのが吉です。

私は淡水が専門なので、あんまり海岸に行って打ち上がった生物の採集とかしないのですが、わずかばかりの経験でもそれなりに珍しいものを見ています。

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そのうちの一つはこれ、クロハラサイウオBregmaceros neonectabanasです。福岡県新宮浜がタイプロカリティですが、まさにその付近で打ちあがった個体を採集したものです。ものすごく寒い12月の早朝でしたが、見ていると続々と沖から泳いできて砂浜に打ちあがって、きらきらしたからだをくねらせて次々に息絶えていく様子は壮絶というか荘厳というか、なんというかとても感動して印象に残っています。

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もう一つはやはりこれ、センタウミアメンボHalobates germanusです。この種は遠洋性で、大海原で大きな群れをつくって生活しており、岸にはまず寄ってきません。しかしながらいくつかの条件がそろうと、こうして海岸に打ち上げられて死んでしまいます。この時は狙っていって、見事にオスとメスの採集に成功したわけですが、この後福岡県内での採集例はなく、珍しいものだと思います。

最近のリュウグウノツカイのニュースとしては、残念ながら途中で死んでしまったようですが、人工授精に成功して孵化した仔魚を1ヵ月ほど飼育した、というこのニュースでしょうか。さすがに稚魚もすさまじいデザインです。水族館で生きたリュウグウノツカイ展示ができる日が来るのではないかという希望をもちました。いつか生きたものを見てみたい魚です。