Ito, T., Hosoya, K., Miyazaki, J. (2019) Lefua tokaiensis, a new species of nemacheilid loach from central Japan (Teleostei: Nemacheilidae). Ichthyological Research: LINK
昨年8月のナガレホトケドジョウ(リンク)に続いて、トウカイナガレホトケドジョウがLefua tokaiensis Ito, Hosoya & Miyazaki, 2019として新種記載されました!おめでたいです!
形態的にはナガレホトケドジョウによく似ていますが、尾鰭や背鰭に斑点模様が入ること、尾鰭付け根に暗色横帯があることなどで区別できます。また、ミトコンドリアDNAの部分塩基配列の特徴は、ナガレホトケドジョウよりもホトケドジョウの方に近いことがすでに報告されています。そのため、ホトケドジョウからナガレホトケドジョウが種分化した後、何らかの理由で東海地方東部でさらにホトケドジョウからトウカイナガレホトケドジョウが種分化したのではないかと考えられています。本種は東海地方東部のかなり狭い範囲にのみ自然分布し、この地域の生物相成立過程を考察する上で非常に重要な種と言えます。
ということで本種の記載により、日本産ホトケドジョウ属の分類学的な問題はほぼ解決したと言えるでしょう。以下に日本産全4種+外来種1種を改めて紹介します。
ホトケドジョウLefua echigonia Jordan & Richardson, 1907
分布:本州(岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県)
エゾホトケドジョウLefua nikkonis (Jordan & Fowler, 1903)
分布:北海道、本州(青森県)
ナガレホトケドジョウLefua torrentis Hosoya, Ito & Miyazaki, 2018
分布:本州(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、岡山県)、四国(徳島県、香川県、愛媛県)
トウカイナガレホトケドジョウLefua tokaiensis Ito, Hosoya & Miyazaki, 2019
分布:静岡県、愛知県
ヒメドジョウLefua costata (Kessler, 1876)(日本では外来種)
分布:朝鮮半島、中国大陸東北部
壮観ですね。ついにこの日が来たかと、感無量であります。
さて、日本産ホトケドジョウ属の分類はほぼ解決したと上で述べましたが、実は個人的にはいくつか気になる集団もまだ残っています。非常に移動能力が低い分類群でもあり、分類学的に区別するほどでないにせよ、保全すべき集団は各地にいます。今後はこれらの細かい部分をさらにきちんと調べていく必要があるでしょう。日本列島の生物多様性は実に奥深いものです。研究はまだまだ続きます。