オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

蛭田 密・漬野 真(2001)九州沿岸における鰭脚類の漂着・迷入・混獲について.日本海セトロジー研究 ,11:15-19.(PDF

メモです。福岡県と佐賀県を中心とした九州におけるアザラシ類の記録がまとめられています。表2のうち、福岡県の部分ちょっと抜き出してみました↓実はけっこう記録があることがわかります。f:id:OIKAWAMARU:20190728213936j:plainこのうちの4番の個体は書いてあるとおり、私の出身研究室にいた剥製です。いまは九州大学総合研究博物館で保管されています。

f:id:OIKAWAMARU:20190728213028j:plain

この個体です。研究室の標本棚の上の方の大きな段ボール箱に入って半ば忘れられていたもので、標本庫整理の際に廃棄の恐れもあったことから、博物館の丸山宗利さんに相談して移管してもらったのでした。

ところでその際に採集データを調べたのですが、すでに当時を知る人が研究室におらず、聞き取りの聞き取りみたいな感じで昭和43年(1968年)春としました。ところがこの論文では1969年7月6日となっています。論文作成時にきちんと聞き取りをしているので、こちらの方が正しいように思います。また、同定もワモンアザラシとしていましたが、これは台座にフイリアザラシ(=ワモンアザラシの別名)とあったからで、きちんと同定したわけではありません。これもこの論文ではゴマフアザラシになっており、著者は標本を実見していそうなのと、当然ながらアザラシ類には詳しいので、ゴマフアザラシが正しそうです。いずれにしろ標本はあるので、調べようと思えば調べられるでしょう。

標本にはきちんとラベルをつけておく(記憶はあいまいになる)、標本はきちんと残しておく(後でいくらでも詳しく調べられる)、それから何より論文にして世に出しておく(こうして後々人目につき検証する機会ができる)、ということの重要性がわかる一件です。加えて、こうした自然史の記録の積み重ねは、これまでの自然環境の変化を知り、その先の変化を予測する上でも役立つ科学的データと言えるでしょう。

おまけです。先ほどの表2の1番の1879年の今津のゴマフアザラシの記録については、当時の騒ぎを知ることのできる興味深いブログ記事があったので紹介しておきます↓

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