オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

昨年末に日本産初記録、新種の水生ガムシが3種記録されています。ということでその3報です。

Minoshima, Y.N. (2019) Taxonomic status of Enochrus vilis (Sharp) and E. uniformis (Sharp) (Coleoptera, Hydrophilidae). Insecta Matsumurana, 75: 1-18.

一本目は混沌著しい「ウスグロヒラタガムシ」の分類について、一筋の光明をさしてくれた論文です。北海道から日本新記録種としてEnochrus affinisが報告されました。本種はユーラシア北部に広く分布する種で、小顎髭の先端節全体が顕著に暗色であることから、近縁のウスグロヒラタガムシE. uniformisやコヒラタガムシE. vilisと区別できるようです。また、本物のウスグロヒラタガムシは模式産地の横浜をはじめ、確認できた限りでは本州からの標本しかないようです。南西諸島でみられる「ウスグロヒラタガムシ」はいったい何者なのか、今後の研究が楽しみです。なお、今回記録されたE. affinisには和名がありませんが、近々和名提唱がなされるとのうわさです。ということでこの3種の国内での分布はひとまずE. affinis(北海道)、コヒラタガムシ(北海道、本州)、ウスグロヒラタガムシ(本州、南西諸島?)ということになります。

 

Minoshima, Y.N., Inahata, N. (2019) First record of Paracymus atomus Orchymont (Coleoptera, Hydrophilidae) from Japan, with key to the Japanese species of Paracymus. Elytra, New Series, 9: 285-288.

続いて2本目。こちらも蓑島博士によるもので、ミナミチビマルガムシ Paracymus atomus日本新記録として奄美大島石垣島西表島から報告されました。本種は東南アジアに広く分布する種で、体表の点刻と体サイズ(小さく2ミリ以下)から同属既知のチビマルガムシP. orientalis、エンデンチビマルガムシP. aeneusと区別が可能とのことです。ということでこの3種の国内での分布はチビマルガムシ(本州~南西諸島)、エンデンチビマルガムシ(本州、九州)、ミナミチビマルガムシ(南西諸島)ということになります。

 

Kamite, Y., Hayashi, M. (2019) A new species of the genus Hydrocassis Deyrolle & Fairmaire (Coleoptera, Hydrophilidae) from Yaku-shima Island, Japan, with notes on the Japanese members. Japanese Journal of systematic Entomology, 25: 169-178.

さらに3本目。こちらは新種記載です。屋久島から新種ヤクシママルガムシHydrocassis fujiwaraiが記載されました!光沢が強く上翅の条溝が不明瞭であることから、同属既知のマルガムシH. lacustrisリュウキュウマルガムシH. jengiが可能とのことです。ということでこの3種の分布はマルガムシ(北海道~九州)、ヤクシママルガムシ(屋久島)、リュウキュウマルガムシ(奄美大島)ということになります。

 

まだまだ国内にも色々といるものですね。さて大変残念なことに私はこの3種をいずれも採集したことがありません(たぶん)。ということで画像の紹介はできません・・無念・・・。また採りにいかないといけません。