オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

生物多様性には3つの多様性があります。すなわち生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性です。ということで生態系の多様性として福岡県の海域を例にして話をすることが多いです。実は福岡県は一つの県の中に極端に異なる性質をもった3つの海をもっています。有明海、瀬戸内海(周防灘)、日本海玄界灘・響灘)です。

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おなじみ有明海!広大な軟泥干潟と最大6メートルもある干満差、そしてそれにより引き起こされる強烈に濁った水が特徴です。上の写真ではムツゴロウがたくさんいる様子が写っています。このほか、ワラスボ、エツ、アリアケシラウオ、アリアケヒメシラウオ、ハラグクレチゴガニ、ヤベガワモチなどなど国内では非常に珍しい生物が多く生息します。

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それから瀬戸内海(周防灘)!瀬戸内海というと本州と四国を思い起こす人が多いですが、当然のことながら九州にもあります。そしてかつての瀬戸内海の環境を多く残している最後の場所が実は九州の瀬戸内海です。広大な干潟が出現するのは有明海と似ていますが、砂礫底の「固い」干潟も多く、また比較的透明度が高い場所が多いのが特徴です。アオギスやカブトガニもまだ多く生き残っています。

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それから日本海玄界灘・響灘)!透明度の高い水に岩礁や砂浜というイメージですが、色々な干潟も点在するのが特徴です。実は日本列島にはかなり普遍的にみられるタイプの海と言え、そのためいわゆる「普通の」海の生物が多く生息しています。ただこんな「普通の」海も朝鮮半島や中国ではかなり珍しい海です(あちらには有明海のような海が多い)。


こうしてみると一口に海の生態系と言っても、色々なものがあるということがわかると思います。そしてどれか一つの海の生態系があればよい、というものではなく、また生物多様性保全の上では、そこにあるべき海があるべき姿で健全にあることが重要だということもわかると思います。

残念ながら、有明海、瀬戸内海、日本海、いずれも環境の悪化は進んでいます。かつてはいくらでも採れた「海の幸」も、種類によってはまったく採れなくなってしまいました。これらの海はそれぞれ独自の「海の幸」を長年にわたって人類に与え続けてきました。どの海もそれぞれの海の特徴を生かしながら大事にし、食糧生産の場として、レクリエーションの場として、大事にしていかなくてはいけません。今後どうやって再生していくのか、ぜひ多くの人に考えていって欲しいと思っています。日本の海はいま、確実に、「死」に向かっていると私は思っています。しかしまだなんとかなります。なんとかしたいです。