オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

近藤高貴(2020)イシガイ科貝類の新たな分類体系.ちりぼたん,50:294-296.

先日にイシガイ類の分子系統地理論文が出たことを本ブログで紹介しましたが(リンク)、本報文ではそこで示された各種について和名と学名の関係を整理するとともに、一部の種に新和名を提唱しています。

九州産のイシガイ類は現時点では10種ということになるわけですが、あたらめて和名と学名を整理すると以下のようになります。
・フネドブガイAnemina arcaeformis (Heude, 1877)
・ミナミタガイ Beringiana fukuharai Sano, Hattori & Kondo, 2020
・ドブガイモドキ Pletholophus reinianus (Martens, 1875)
・ヌマガイ Sinanodonta lauta (Martens, 1877)
・キュウシュウササノハガイ Lanceolaria kihirai Kondo and Hattori, 2019
・ニセマツカサガイ Inversiunio yanagawensis (Kondo, 1982)
・イシガイ Nodularia douglasiae (Griffith and Pidgeon, 1833)
・オバエボシガイ Inversidens brandtii (Kobelt, 1879)
カタハガイ Obovalis omiensis (Heimburg, 1884)
・マツカサガイ Pronodularia japanensis  (Lea, 1859)⁠

なおマツカサガイは先の論文で3系統を認めており、九州にはP. cf. japanensis 1が分布することになっていますが、これに対応する和名として本報では「マツカサガイ広域分布種」が提案されています。ただ現状では学名上はjapanensisですし、形態的差異もはっきりしないので、リストなどではひとまずこれまで通りマツカサガイで良いのではないかと思いました。

ほか、九州外の種としてBeringiana gosannensisについてキタノタガイ、Buldowskia kamiyaiについてヒガシタネドブカイの和名が新称されています。また、復活した種としてはBeringiana beringianaにチシマドブガイ、 Buldowskia iwakawaiにカタドブガイが過去の対応通り付されています。それから旧イシガイは主に東日本にタテボシガイN. nipponensis、西日本にイシガイN. douglasiaeが分布するということになります。

ドブガイSinanodonta woodianaは先の論文で外来種として日本に定着していることがわかっており、和名と学名の対応もこの通りとなります。かつてヌマガイとタガイを一緒にして「ドブガイ」と称していたことがあり、時折まだドブガイとリストしている調査報告書を見かけることがありますが、今後はドブガイと書いてしまうと外来種のドブガイS. woodianaのことになってしまうので、注意が必要です。なお属名としてはドブガイ属Sinanodontaですので、ヌマガイ類の未同定個体についてドブガイ属の一種、と記すのは問題ありません。