オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文(イシガイ)

川瀬基弘・村松正雄・横山悠理・横井敦史・熊澤慶伯(2020)愛知県奥三河地域で発見された日本初記録のBuldowskia shadini瀬木学園紀要,17:3-8.(リンク

イシガイ類は好きなので、日本新記録は折々追いかけています。愛知県から国内未記録のドブガイ類を発見したという論文です。

日本列島を含む極東アジア域のイシガイ類については、特に分子系統の観点から2020年に大論文が出ていますので(当ブログでも紹介しました↓)、これをベースに今後は色々な発見があるのではと思っておりました。

oikawamaru.hatenablog.com

今回の論文はまさにこのLopes-Lima et al. (2020)をベースとして、遺伝子による同定を行い、主に韓国からロシアにかけて分布するBuldowskia shadiniと類似した塩基配列の個体群が愛知県にいることを確認したという内容になっています。本論文では形態も確認しており、ドブガイ型、フネドブガイ型、タガイ型の3タイプを確認しています。しかしこの点もすでに先行研究で指摘されているとのことで、遺伝子と形態からこの種と同定できるという指摘は、妥当であるように思えます。現時点では外来種か否かを判断する材料に乏しいようですので、今後の研究の進展が必要です。

ところで本論文の結果もそうであったわけですが、やはりドブガイ類の形態同定(殻のみでの同定)はかなり困難なのではないかということが、最近色々とわかってきています。すべて遺伝子で同定するのは非常に困難でもあり、形態(特に軟体部)での同定形質に関する研究の進展が望まれるところです。遺伝子が違い、別タクソンということであれば、形態もどこかに違いがあるはずです。