オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Kobayashi, T., Hayashi, M., Kamite, Y., Sota, T. (2021) Molecular phylogeny of Elmidae (Coleoptera: Byrrhoidea) with a focus on Japanese species: implications for intrafamilial classification. Systematic Entomology DOI: 10.1111/syen.12499 (LINK)

日本産ヒメドロムシ科の系統に関する決定版論文が出ました。大作で感動します。形態についても詳細に検討を行い、属についても分類学的な検討を行っています。日本産に関するところでは、ノムラヒメドロムシの属名変更(Nomuraelmis→Stenelmis)、ハガマルヒメドロムシ、ツルギマルヒメドロムシ、ダイセンマルヒメドロムシ、スネグロマルヒメドロムシ、タテスジマルヒメドロムシ、スネアカヒメドロムシ、ツヤケシマルヒメドロムシ、コマルヒメドロムシ、ツヤヒメドロムシ、ヨツモンヒメドロムシの属名変更(Optioservus→Heterlimnius)です。そうです、ノムラエルミスとオプティオセルブスが消滅してしまいした。しかしその根拠はこの論文を見ると明白です。

遺伝的には4系統を認めており、Group1がツヤドロムシ族(ツヤドロムシ属、ウエノツヤドロムシ属、ツブスジドロムシ属、ヒメツヤドロムシ属、カラヒメドロムシ属、ナガアシドロムシ属)とハバビロドロムシ属、Group2がマルヒメドロムシ系(キタマルヒメドロムシ属Heterlimnius+旧Optioservus、ケスジドロムシ属)、Group3がアシナガミゾドロムシ系(アシナガミゾドロムシ属、旧ノムラヒメドロムシ属、ミゾドロムシ属、ヨコミゾドロムシ属、アヤスジミゾドロムシ属)、Group4がその他(クロサワドロムシ属、セマルヒメドロムシ属)となっています。この中で興味深いのはツヤドロムシ属とウエノツヤドロムシ属とツブスジドロムシ属が完全に入れ子状になっているところ、アシナガミゾドロムシ属とミゾドロムシ属が単系統になっていないところでしょうか。

個人的に興味深かったのがGroup4の皆さんです。なんでここだけ形態がやけに多様化してしまったのでしょうか。ここにはヒメドロムシ科の模式属であるElmis属も入っていますが(日本には分布しません)、基部にきていることから古い系統なわけで、メジャーなハビタットを新型のGroup1~3に奪われて、特殊化したのだけが残ったみたいな感じなんでしょうか。色々と妄想が膨らみます。そしてこの中にヒョウタンヒメドロムシやカエンツヤドロムシをいれるとどうなるのか?今後の展開も気になります。

ツヤドロムシ族やアシナガミゾドロムシ‐ミゾドロムシについては、国外産のタイプ種との比較が必要ということで、今回の論文では分類学的な変更は行っていませんが、このあたりも今後動きがあると思われるので引き続き注視したいところですね!

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さようならノムラエルミス!!以後はノムラヒメドロムシStenelmis amamiensis (M.Satô, 1964)です。