オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Matsumoto, T., Matsuura, K., Hanzawa, N. (2021) A new species of nine-spined stickleback, Pungitius modestus (Gasterosteiformes, Gasterosteidae), from northern Honshu, Japan. Zootaxa 5005: 1–20. 

www.mapress.com

 

日本産淡水魚が一種増えました。新種・カクレトミヨPungitius modestus Matsumoto, Matsuura & Hanzawa, 2021です。模式産地は山形県天童市最上川水系)となっています。

さて、山形県からのトミヨ属というと、やはりトミヨ属雄物型が脳裏をよぎるわけですが、今回記載された種は雄物川水系のものではありません。それでは何かというところですが、日本産トミヨ属の遺伝的な背景についてはTakahashi et al. (2016)で詳細に報告されているので、まずはそれを読むと理解がしやすそうです。で、その論文を読んで解説した時のブログ記事がこちら↓

oikawamaru.hatenablog.com

ということで今回新種記載されたのは、この論文でミナミトミヨP. kaibaraeクレードの中でJ4となっている「最上川水系の雄物型」であると思われます。私は先のブログでは「トミヨ属淡水型山形集団(未記載種)」が見えるとか勝手に書いていますが、これは月光川水系の淡水型なのでこれとは別です。つまり、雄物川最上川から知られていた「雄物型」のうち、最上川のものが今回新種として記載されたということになりますね。

既知のトミヨ属とは、背鰭や胸鰭の条数、体側鱗板が小さくそれぞれつながらないこと、背鰭・腹鰭・尻鰭の棘は短いこと、背鰭の膜鰭は黒く着色すること、などの特徴の組み合わせで区別ができるようです。

雄物川の「雄物型」やムサシトミヨなど、他と区別できる学名未決定種はまだいるので、今後の分類学的研究の進展が楽しみです。ちなみに私はトミヨ類の区別はまったく苦手なので、勉強していかなくてはなりません。。