オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

河川の生物多様性保全を考える上で重要そうな論文2つ。

Edouard, L. ほか (2021) Effects of forest cover on richness of threatened fish species in Japan. Conservation Biology: Early View(オープンアクセス

私があれこれ言うよりも、プレスリリースの解説記事がわかりやすいです↓

www.nies.go.jp

Uno, H. ほか (2021) Spatially variable hydrological and biological processes shape diverse post-flood aquatic communities. Freshwater Biology: Early View (LINK)

こちらも私があれこれ言うよりも、プレスリリースの解説記事がわかりやすいです↓

research-er.jp近年では論文の内容について、研究者自らがこうして解説記事を一般向けに出してくれるので良いですね。

さて、論文の1つめは森林生態系が健全なほど河口域の生態系が健全であるという研究、次のものは河川の氾濫原湿地が生物多様性を高める上で重要だという研究です。いずれの研究も直感的にはそうだろうと思われることですが、それを科学的に証明することは難しいです。しかし、こうした科学的知見があることで、例えば、海の食用となる有用な魚介類を守っていくために、森林や河川の生態系を再生するような事業に公的資金を出す、なんていう時の根拠にもなるでしょう。

そういえば最近に「有明海の冬の味覚二枚貝の「タイラギ」10年連続休漁」というニュースを見ましたが、いくら放流しても禁漁しても増えない、という内容であったわけですが、これなどはどう考えても「場が悪い」わけです。有明海に関しては致命的なあれが原因の可能性が高いわけですが、それがどうにもならない以上は、こうした研究を根拠として、沿岸域のエコトーンの再生や、河川・農業用水路のコンクリ護岸を多自然護岸に再改修するような大型公共事業を、積極的に進めるべきだと思います。私は有明海産のタイラギを食べたいので、やれることはすべて試して欲しいです。繰り返しになりますが、放流しても禁漁しても増えないということは、場が悪いということです。であるならば、場を再生するというのが次の一手であることは間違いありません。そしてその「場」とは、上記の研究から明らかなように、沿岸域のみならず森林域も含む有明海にそそぐ流域全体ということになるわけです。