湿地帯中毒

湿地帯中毒患者(末期)の日記です。

論文

Nakajima, J. 2012. Taxonomic study of the Cobitis striata complex (Cypriniformes, Cobitidae) in Japan. Zootaxa, 3586:103-130.
ついに、論文が出ました。3新種6新亜種の記載と1種の再記載です。非常に力を注いでいただけに、嬉しい(感涙)。コイ目特集号に載せてもらったので無料ダウンロード可能です(→リンク)。ということで、ひとまず和名と学名を整理すると以下になります。
チュウガタスジシマドジョウCobitis striata striata
オンガスジシマドジョウCobitis striata fuchigamii
ハカタスジシマドジョウCobitis striata hakataensis
アリアケスジシマドジョウCobitis kaibarai
オオガタスジシマドジョウCobitis magnostriata
サンヨウコガタスジシマドジョウCobitis minamorii minamorii
ビワコガタスジシマドジョウCobitis minamorii oumiensis
トウカイコガタスジシマドジョウCobitis minamorii tokaiensis
サンインコガタスジシマドジョウCobitis minamorii saninensis
ヨドコガタスジシマドジョウCobitis minmamorii yodoensis
池田兵司氏がカワドジョオCobitis taenia striataを記載したのが1936年、皆森寿美夫氏がスジシマドジョウに複数種がいることを発表したのが1952年、その後、斉藤憲治氏や北川忠生氏らにより研究が発展し、ついに2012年になって学名をつけることが出来ました。感無量です。ご協力、ご意見いただいた皆様、ありがとうございました。もちろん分類学も仮説と検証を繰り返す科学の一分野ですから、今後これらの学名がどうなるかはわかりません。が、現時点ではこの結果は自信を持って提示できます。
以下学名の補足。地名系はまあ良いですかね。その他について、まず、オンガスジシマドジョウの亜種名fuchigamii。これはこのドジョウの発見者である渕上信好氏に献名したものです。氏は遠賀川の主として現在も君臨していますが、学生時代の私に色々と教えてくれ、シマドジョウ属への扉を開いてくれた師匠の一人でもあります。少しは恩返しが出来たかな、と思っています。
アリアケスジシマドジョウの種小名kaibaraiは江戸時代の福岡出身の博物学者・貝原益軒に献名しました。氏は私が超リスペクトする数少ない人物の一人で、1709年に書き上げた自著「大和本草」において筑紫(福岡)におけるシマドジョウ属の存在を書き記しています。もちろんそれが今の何シマドジョウかは判然としませんが、九州にシマドジョウ属が分布することを300年前に報告した九州の偉大な博物学者の名前は、九州特産の本種にこそふさわしいでしょう。
サンヨウコガタスジシマドジョウの種小名minamoriiは、先に述べました皆森寿美夫博士に献名したものです。小型種族を見出し、その後のハイレベルな論文の数々。まさに日本シマドジョウ界の先駆者であります。
最後にオオガタスジシマドジョウ。超悩んだのですが、Tommy氏との採集ツアー中に皇帝スジシマ、大王スジシマとか言っていたのを反映して、「偉大なスジシマ」というイメージで作ってみました。いかがでしょうか。私も相当好きな種類で、世界に誇る名ドジョウだと思います。
写真もかなり気合いれて並べました。特に雄の繁殖期-非繁殖期の違いは、ぜひ見てもらいたいです。それとさらなる必見は淀川水系のアレです。プロ写真家のU氏に無償提供していただきました。おかげで雌は全種並べることが出来ました。この個体が知る限りでの最後に採集された個体です。でも雄の生体写真はついに見つかりませんでした。お持ちの方がいたらぜひご一報を。