湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

生きています。某感染症はなかなか大変な状況になってきていますが、その中でもこれまでに問題化していた部分が解決していたわけではなく、また私はそうした問題解決のためにやとわれているので、浮足立つことなく粛々と職責を果たそうと努力しています。害虫も、生物多様性保全に関するあれこれも、研究もこなしつつ日々過ごしています。

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先日にポン氏の同級生の女子二名が自宅前を通りがかった時、ちょうど私が鹿の頭骨を持っていたので呼び止めて見せてあげたらとても喜んでいました。良いことをしました。また、ちょうどミズカマキリとドジョウも生きたのがいたので見せたところ、ミズカマキリは知っていたのにドジョウを知らなかったのに驚きました。ドジョウは有名な湿地帯生物であると思い込んでいたのかもしれません。確かに環境省レッドリストでは準絶滅危惧、福岡県レッドデータブックでは絶滅危惧II類です。もうすでに普通の生き物ではないわけで、今の若者(小学生)にはまったくなじみのない生き物と言っても過言ではないのでしょう。こんな状況にしてしまった大人の一人として、再びドジョウが増える環境の再生を少しでもがんばっていきたいです。あわせて、ドジョウの普及啓発も油断せずに進めたいです。保全の第一歩は「知ること」です。

繰り返し繰り返しで恐縮ですが、ドジョウを増やす、となった時にその辺から買ってきたドジョウを放流してはいけません。それは外来種であり、ただの環境破壊です。ドジョウを増やすといってもその水系に在来のドジョウが増えなければいけません。そしてその手段は、まずは環境の再生です。

 

 

謹賀新年

あけましておめでとうございます。今年も湿地帯中毒は続きます。よろしくお願いします。

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2021年は丑年ということで、牛にちなんだ画像はないかと探したところ、クロウシノシタがありましたので、はりつけておきます。名前の由来は「牛の舌」です。沿岸域の砂底に生息しています。

日記

ということで2020年も今日でおしまいです。某感染症のあれこれで大変な一年でした。来年は色々と落ち着くことを願います。

そんな一年でしたが、個人的には色々と劇的な出来事も多く、研究活動や湿地帯活動では充実した年となりました。まずその一つが、念願の水生昆虫の図鑑である「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」を出版できたことです。その時の記事です↓

oikawamaru.hatenablog.com

それから、発見から10年以上かけてようやく新種として記載できたカエンツヤドロムシもありました。その時の記事です↓

oikawamaru.hatenablog.com

淡水魚と水生昆虫の両方を研究するというスタイルでずっと来ている私ですが、学位をとったのは淡水魚の方であり、ドジョウの図鑑を出すなど(当然のことながら)、淡水魚の研究の方が先行していた感がありましたが、これでようやく、水生昆虫のほうも専門と、ちょっとだけ言っても良いのかなという気がしています。2021年も引き続き、淡水魚と水生昆虫の二刀流研究者として、できるところまで挑戦し続けたいです。

他、今年出会って印象深かった湿地帯生物が以下です。

KOMIYA氏の協力を得て採集したソウギョ

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その時の記事です↓

oikawamaru.hatenablog.com

投網を死ぬほどうってなんとか1匹採れたアオギス!

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その時の記事です↓

oikawamaru.hatenablog.com

それから久しぶりに投網で採ったヒラ!これもKOMIYA氏の協力を得たものでした。ありがとうございます!

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その時の記事です↓

oikawamaru.hatenablog.com

それから南の島で採ったヒメタマガムシ、ミナミチビマルガムシ、チビマルガムシのそろい踏みも感慨深いです。

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保全のほうでは、WWFジャパンと協力して進めていた成果物の出版もありました。こちらが記事です↓

oikawamaru.hatenablog.com

実はさらにこのほかにも発表できない日本未記録のマル秘湿地帯生物に4種出会ったのでした。このうち2種は、なんとか2021年内に劇的に論文化&大公開できればと思います。

 

湿地帯も色々行って、色々と感動したんですけど、今年の一番というとここかなあと思います。

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ここは完全に埋め立て地の上の人工の湿地帯です。人類にはこういうものがつくれる、湿地帯は再生できる、というのは勇気づけられますね。ただ重要なのは、ここについて人類はただ場をつくっただけ。植物も水生昆虫も勝手にやってきたものだけで構成されているということです。しかし逆に考えると、ある程度周辺の環境に余力がないとここまでの再生はできない、人類の力だけではここまでできない、ということなのかもしれません。日本列島の湿地帯は、まだなんとかなると思っています。日本各地での湿地帯再生も、今後どんどん進んでいけばと思います。

 

ということで2020年も湿地帯中毒のほうご愛読いただきありがとうございました。

論文

Hayashi, M., Nakajima, J., Ishida, K., Kitano, T., Yoshitomi, Y.(2020)Species diversity of aquatic Hemiptera and Coleoptera in Japan. Japanese Journal of Systematic Entomology, 26: 191-200.

今年最後の共著論文が出ました!日本産水生昆虫(カメムシ目・コウチュウ目)の種多様性に関する総説論文です。

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今年2月に文一総合出版から「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」という図鑑を出版しましたが↓

oikawamaru.hatenablog.com

その際に作成したリストに基づき、日本産真正水生のカメムシ目とコウチュウ目について、その分類史、生息場所、主要地域別の種数・固有種数、分類群別のレッド掲載種数などの情報を整理しました。

例えば分類学的研究が進んだのは何年頃かとか、水田を生息場所とする種は全体の何割とか、ある科のレッド掲載種はどのくらいとか、本州には何種いてそのうち何種が固有種で九州と比べるとどうかとか、そういうのに使える論文になっていると思います。ぜひ使って下さい。第一著者のHayashiさんがPDFを公開しています(LINK)。

なおこの論文の内容は2019年末時点のものを整理しており、その後に新たに日本のファウナに加わった種、分布新知見が得られた種ももちろんあります。その後の履歴は「日本産真正水生昆虫リスト(リンク」において随時更新しているので、場合によってはこちらも参照するとより良いです。

 

ということで新たに記録・記載されるなどして、ネイチャーガイド日本の水生昆虫に未掲載、すなわち上の論文でも扱っていない種は以下となります。

 

(新記録)ヒメマルケシゲンゴロウ Hydrovatus subrotundatus Motschulsky, 1860

分布:四国(愛媛県);中国(南部)~南アジア

※1916年に採集され新種記載された疑義種H. japonicus Takizawa, 1933がH. subrotundatusのシノニムであることが判明し、日本の種として再記録された。
Watanabe, K., Biström, O. (2020) Hydrovatus japonicus Takizawa, 1933, a new synonym of Hydrovatus subrotundatus Motschulsky, 1860 (Coleoptera: Dytiscidae). Japanese Journal of Systematic Entomology 26: 119-120.

 

(新種)ヒラサワツブゲンゴロウ Laccophilus hebusuensis Watanabe & Kamite, 2020

分布:本州(東北地方,関東地方)

※2020年12月に新種として記載。タイプ産地は福島県双葉郡川内村の平伏沼。同時に山形県、栃木県、千葉県から記録されている。
Watanabe, K., Kamite, Y. (2020) A new species of the genus Laccophilus (Coleoptera: Dytiscidae) from eastern Honshu, Japan, with biological notes. Japanese Journal of Systematic Entomology, 26: 294–300.

 

(新記録)ウスリーマメゲンゴロウ Platambus ussuriensis (Nilsson, 1997)

分布:対馬朝鮮半島,中国,ロシア極東部

※日本(対馬)からの初記録
三宅 武(2020)日本初記録のゲンゴロウPlatambus ussuriensis (Nilsson).さやばねニューシリーズ,37:44⁻45.

 

(新種)サヌキダルマガムシ Hydraena obaei Hayashi & Yoshitomi, 2020

分布:四国(香川県

※2020年6月に新種として記載。タイプ産地は香川県綾川町
Hayashi, M., Yoshitomi, H. (2020) A new species of Hydraena from Kagawa Prefecture, Shikoku, Japan (Coleoptera: Hydraenidae). Japanese Journal of Systematic Entomology 26: 99-105.

 

(新記録)ミナミチビマルガムシ Paracymus atomus d'Orchymont, 1925

分布;南西諸島(奄美大島伊平屋島石垣島西表島与那国島);中国,東南アジア

※日本(奄美大島石垣島西表島)からの初記録
Minoshima, Y. N., Inahata, N. (2019) First record of Paracymus atomus Orchymont (Coleoptera, Hydrophilidae) from Japan, with key to the Japanese species of Paracymus. Elytra, New Series, 9: 285-288.

その後にさらに伊平屋島与那国島からも記録されています。

上手雄貴(2020)伊平屋島におけるミナミチビマルガムシの記録.さやばねニューシリーズ,39:62.
Watanabe, K. (2020) New distributional records of Paracymus atomus d'Orchymont, 1925 (Coleoptera, Hydrophilidae) from Yonaguni-jima island, the Ryukyus, Japan. Elytra, New Series, 10: 349-350.

(新記録)ミナミセマルガムシ Coelostoma bhutanicum Jayaswal, 1972

分布;南西諸島(石垣島西表島与那国島);台湾,南アジア

※日本(石垣島西表島与那国島)からの初記録
Watanabe, K., Minoshima, Y.N. (2020) First record of Coelostoma bhutanicum Jayaswal, 1972 (Coleoptera: Hydrophilidae) from Japan. Japanese Journal of Systematic Entomology 26: 151-152.

 

(新種)カエンツヤドロムシ Urumaelmis flammea Nakajima & Kamite, 2020

分布:九州(熊本県、宮崎県)

※2020年9月に新種として記載。タイプ産地は熊本県山都町
Nakajima, J., Kamite, Y. (2020) A new species of the genus Urumaelmis Satô (Coleoptera, Elmidae, Macronychini) from Kyushu Island, Japan. Zootaxa, 4853: 421–428

 

(新種)ヒョウタンヒメドロムシ Podonychus gyobu Yoshitomi & Hayashi, 2020

分布:本州(島根県),九州(大分県熊本県

※2020年5月に新種として記載。タイプ産地は大分県宇佐市
Yoshitomi, H., Hayashi, M. (2020) Unexpected discovery of a new Podonychus species in Kyushu, Japan (Coleoptera, Elmidae, Elminae, Macronychini). Zookeys, 933: 107-123.

その後さらに島根県熊本県からも記録されています。

石山侑樹・林 成多・森本涼介(2020)ヒョウタンヒメドロムシ(コウチュウ目,ヒメドロムシ科)の本州本土からの新分布記録.昆蟲(ニューシリーズ),23:97-98.
築島基樹(2020)熊本県天草市におけるヒョウタンヒメドロムシの採集記録.KORASANA,95:100.

 

(新記録)ラウスミズムシ Arctocorisa carinata lansburyi Jansson, 1979

分布:北海道;ロシア,カザフスタン,モンゴル

※日本(北海道・羅臼湖)からの初記録
平澤 桂・三田村敏正・高橋法人(2021)北海道から採集された日本初記録の大型ミズムシArctocorisa carinata lansburyi Jansson, 1979.月刊むし,599:10-11.

 

日本の水生昆虫相についてはまだまだわかっていないことが多くあります。来年はどんな種が発見され、報告されるのか楽しみですね。またそうした調査の起爆剤に「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」が多少なりとも貢献していればうれしいです。本論文の出版により2020年がきっちり納まったなという気がしています。共著者の皆様には多く助けていただきました。本当にありがとうございました。さてこの先、いつか、増補改訂版を出したいと思っているところですので、さらなる調査研究を自分自身も進めていきたいところです。

日記

今日はハゼ研究者として著名な上皇陛下の誕生日ということで某SNSなどではハゼ画像を流す催しが盛り上がっているようなので、ここでもハゼの画像を紹介しておきます。

まずは九州の誇る3大珍ハゼ。ワラスボ、ハゼクチ、ムツゴロウです。

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これがワラスボ

 

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これがハゼクチ

 

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これがムツゴロウです。

いずれも国内では九州の有明海八代海に固有の珍種ですが、同種は朝鮮半島から中国大陸に広く分布しています。九州西部と大陸の沿岸部が近接していた、かつての氷期に分布を広げた遺存的な集団です。貴重な自然遺産。

 

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ついでにシロチチブ。今年久しぶりに出会いました。泥干潟の中にある岩礁や牡蠣礁のあたりに生息する比較的珍しいハゼです。かつては有明海の準固有種的な扱いをうけていた種ですが、瀬戸内海には広く分布するようです。写真も福岡県の瀬戸内海側の個体です。名前の通り、時と場合によってはかなり白っぽく、かっこいいハゼです。

日記

割合に常に私の車の中には複数の網が常備されています。なぜそんなに網ばかり持っているのか?必要なのか?と(身内から)問われることは少なくないのですが、すべて用途は異なり、湿地帯調査において必要なものです。遠征時にはこの中から取捨選択してもっていくわけですが、本当はなるべく全部あると安心です。無理ですが。

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以下解説です。

投網:言わずと知れた投げ網。魚類を採るときに使いますが、エビ類もけっこう採れます。調査用によく用いているのは30節2000目の細かいものですが、ちょっと大きい魚を狙う時は18節1200目も併用します。また超大型魚を狙う際にはコイ用投網も使います。投網は重いのが難点。また場所によっては使用禁止だったりします。

伸びるタモ網:釣具店などで売っているものです。ちょっと遠いところに浮いている湿地帯生物、アメンボ類などを採る時に役立ちます。強度はないのであまりガシャガシャすると壊れます。また内部が錆びて折れることがあります。

捕虫網:陸上昆虫はほとんど採りませんが、池や川でトンボ類などを採るときに使います。なので濡れることも想定して常備しているのはやや粗目のメッシュ生地です。

エビタモ:潜水して魚を採るのに使います。また、夜に魚やエビ、カニなどを陸上から採るのにも使います。網目が大きいので小さい魚は採れず、また口径が小さく軟弱なので大きな魚も採れません。しかし時と場合によってはものすごく活躍する網です。番外編としてセミ採りにも使えます。

目の粗いタモ網:枠のしっかりしたものです。泥の多い場所での魚採り、砂に潜っている魚採り、流れの早い場所での魚採りなどに使います。目が粗いので水生昆虫調査には不向きです。一通りの種を出す時の魚類調査で使うことが多いです。

目の細かいタモ網:枠のしっかりしたものです。通常は主にこれだけ使っています。ヒメドロムシから魚までなんにでも使えて便利です。特に愛用しているのがHOGAのIS40-1Wというものです。これはかなりハードに使えてかなり丈夫なのでおすすめです(リンク→HOGA)。一方で目が細かいので、泥や砂が抜けにくく、こうしたものを大量にすくったりする調査ではやや操作性が悪いです。

小さなタモ網:ごく浅い場所で小さな水生昆虫を採る時に使います。枠が薄いので、ぴったりと底につけることができます。ヒメドロムシ採りにも便利です。ただ強度は弱いので乱暴に扱うと首が折れて壊れます。

金魚網(小):採集そのものよりはバケツの中から採れた魚を選り分けることに使っています。が、ごく浅い小規模な水域でケシカタビロアメンボ類を捕まえるのにはかなり役立ちます。

金魚網(大):ごくごく浅い場所で小さな水生昆虫を採る時に使います。生地はかなり柔らかいので粗雑に扱うと壊れます。

この他、場合によっては超大型タモ網(幅60センチ)や、サデ網を使うこともあります。超大型タモ網は砂に潜っているカマツカ・シマドジョウ採りや水草豊富な池での大型ゲンゴロウ採りなどには便利ですが、環境への破壊力も大きいのでかなり限られた場合に出撃させています。サデ網は瀬でハゼ類やカジカ類を採る時に便利です。ただ私の場合はこうした採集は超大型タモ網で代用できるので、サデ網はあまり使いません。

なお、これらの網類は場所や時期によっては規制されていることもあるので、調査をする時は都道府県の内水面漁業調整規則などを確認しておきましょう。

日記

生きています。12月に突入しました。疫病はあいかわらず、蔓延しています。今年は帰省もあきらめまして、こちらにずっといようかとおもっています。このさきどうなることやらですが、なんとか生きていかなくてはいけません。

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なんとなく、ミミズハゼの顔。

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こちらは近縁のイドミミズハゼの顔です。伏流水中に生息すると思われ、眼が小さいです。

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なんとなく、ケシゲンゴロウかつては普通種として知られましたが、近年激減中。九州北部でもかなり少ない種になってしまいました。

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同じところにいた、こちらがケシゲンゴロウの幼虫。頭部には天狗の鼻のような部分が突出しています。この構造の機能は長らく謎でしたが、2018年になって、カイミジンコの仲間を効率的に捕獲することに使われているということが、はじめて報告されました。その論文はこちらです→リンク