湿地帯中毒

湿地帯中毒患者(末期)の日記です。

日記

はじめの記録以来一切採れていない幻系の水生昆虫は日本にもいくつかいますが、そのうちで一番幻度が高いのがテラニオナガミズスマシOrectochilus teranishii Kamiya, 1933でしょう。この種は1920年に「東京郊外玉川」から得られた10数頭に基づいて1933年に新種記載された種ですが、その標本は戦災によりすべて焼失したとされています。すなわち、この世に現物が一切存在しません。採集地はおそらく現在の東京都世田谷区玉川付近ですが、1920年頃と現在を比べるとその環境は激変しており、現存は絶望的です(今昔マップ)。

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記載論文をみるとツマキレオナガミズスマシに似ていますが、翅端はやや突出しており逆V字状に切れ込むツマキレとは明確に区別できます。原記載の神谷(1933)は貴重文献ですが、国立国会図書館デジタルコレクションでPDFが公開されており、誰でも読むことができます(ありがたい!!)→リンク

原産地での現存は絶望的ですが、関東地方のどこかにひっそり生き残っていないかなと思っています。あるいはせめて、どこかに標本が残っていないものでしょうか。標本でも良いので実物を見てみたいミズスマシです。

ラニオナガミズスマシについては、東京都本土部昆虫目録作成プロジェクトのコラム「テラニオナガミズスマシは絶滅したのか?」もお勧めです→リンク

日記

色々と進みません。本人の気力などの問題です。

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クロチビミズムシMicronecta orientalis

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ハイイロチビミズムシMicronecta sahlbergii 

いずれも福岡県産。基本的にクロチビミズムシは河口や海近くの浅い湿地に、後者は平地から丘陵地のため池や水田に多い印象ですが、まったく同じ場所に両種とも多産することがあります。でも交尾器は違うし、見た目も違う。両種ともチーチー鳴く。興味深い湿地帯生物です。

県内では同属でもう二種、チビミズムシMicronecta sedulaとコチビミズムシMicronecta guttataの記録もあり、コチビミズムシはいくつかの河川下流域に普通にみられます。一方で、チビミズムシは県内で採ったことがありません。いったいどこにいるのでしょうか。。この同属4種のうちコチビミズムシは顕著に小型で完全な流水性でまったく違う生態をもっていることがわかりますが、残り3種は体サイズも同様の止水性種で、好みの生息環境の違いや、生態の違いが興味深いところです。

日記

今日は知り合いの高校生の方に教えてもらった川へ調査。行ったことがない川だったのですが、魚がたくさんいるとの事前情報のとおり魚がたくさんいて感動しました。まだこんな川があったとは・・

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見るからによさそうです。

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イカワ。

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モツゴ

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ヤリタナゴ。

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バラタナゴ。おそらく純系のニッポンバラタナゴ。

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ミナミメダカ。

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イトモロコ。

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これは外来種のコウライモロコ。

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ゼゼラ。

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ニゴイ。これはびっくり。

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ツチフキ。かわいい。

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良いフナ。とりあえずギンブナで。

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ナマズ

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もちろんカマツカもいました。

小一時間ほどでコイ、ギンブナ、オイカワ、カマツカ、ツチフキ、ゼゼラ、ニゴイ、イトモロコ、コウライモロコ、タモロコ、モツゴ、バラタナゴ、ヤリタナゴ、ナマズ、ミナミメダカ、トウヨシノボリ、カムルチーの17種が確認できました。いつまでもこのままだと良いのですが。。

研究会のため大阪に行く用事があったので、ついでに東淀川区にある瑞光寺というお寺さんに行ってきました。ここには世界的にも珍しいクジラの骨でできた雪鯨橋というものがある、という話を本で読んだので興味をもったものです。f:id:OIKAWAMARU:20181118221010j:plainまず入り口にクジラの骨が立っています。

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これがクジラの骨を使った橋である「雪鯨橋」。なるほど独特の雰囲気で、これはすごいです。

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 この橋は6代目と書いてありました。

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こちらが5代目の骨たちですね。

瑞光寺と雪鯨橋についての東淀川区の解説文→(リンク

これはまさに生物多様性の文化的サービスです。ただし、このいわれを読んでもわかるように、もともとは日本沿岸で採れたクジラを使って作っていたもの。北大西洋南極海での捕鯨はおそらく今後、禁止に近いかなり厳しい状況に向かっていくことでしょう。この先この珍しい橋の文化を守っていくためには、昔のように日本列島の沿岸域にクジラがたくさん来遊してくるよう、環境を整えてやらねばなりません。日本国内で雪鯨橋の材料となるクジラがいつでもまかなえるようにしておかねば、この興味深い「風習」もいずれ継続が不可能になってしまうことでしょう。そんなことを一人、境内で考えていました。

それにしても本当に独特な雰囲気のあるお寺と雪鯨橋でした。実に良いものでした。

日記

最近F岡県内のとある川において、「きれいな川を取り戻すべく、環境教育として子供にコイを放流させた」、というような新聞記事をみかけました。このように自然河川へのコイ放流を子供にさせて川を保全する心を教えたい、などという「環境教育」は時折目にしますが、これは非常に問題です。

そもそも、飼育品種の外来系統のコイは純然たる外来生物であり、加えて外来系統のコイが生態系に大きな悪影響を与える研究例は複数報告されています。すなわち外来系統のコイは侵略的な外来生物という位置づけになります。

コイは日本にも在来の集団がいましたが、最近の研究では在来ゴイはほぼ琵琶湖にしか残っておらず、国内他地域でみられるほぼすべてのコイが中国大陸やヨーロッパのコイの遺伝的特徴をもった改良品種のコイ(いわゆるヤマトゴイやニシキゴイ)の系統、すなわち外来系統であることが明らかになっています。この改良品種のコイは養殖がしやすいため、一般的に入手できる「コイ」はほぼ100%外来系統のコイと言えます(見た目が黒であっても)。また、日本の在来系統(琵琶湖産)のコイと一般的な外来系統のコイは遺伝子が明瞭に異なるのみならず、形態でも区別可能であることから、分類学的には別種として扱うことが妥当であると考えられています。すなわち放流されるコイは満場一致で外来生物であるということです。

環境教育としての外来コイ放流がなぜ問題か、ということですが、私が個人的にもっとも問題だと思うのは、「子供に対する教育として行っている」という点です。国に生物多様性基本法があり、各地方自治体に生物多様性地域戦略等の法定計画がある現在、特に目的のない侵略的な外来生物の放流は社会的に「悪」と位置付けられるものです。また、環境教育としてのコイの放流の多くが「環境を保全するため」「川をきれいにするため」などの名目で行われていることも、まったく科学的根拠がなく問題です(むしろ水が汚れて生き物が減るという研究はある)。すなわち、それを主導している大人は、教育と称して子供にウソを教えて悪いことをさせているわけです。私が考える環境教育としてのコイ放流のもっとも大きな問題点はここにあります。正しいこと、新しいことを知る努力をしない大人が子供にものを教えてはいけないのです。

この点に関しては、こうしたイベントを「良いこと」として報道する新聞やテレビ等のマスメディアの見識の低さも、強く非難されるべきです。

 

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勘違いされると困るのですが、私は淡水魚好きなのでコイを食べるのも大好きです。逃げ出さないよう管理された池で大事に養殖されるヤマトゴイはとても美味しいです。このように養殖しやすいコイを品種改良して作り上げ、比較的手軽かつ安価にコイを食べることを可能にした水産技術はとても素晴らしいものです。

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また、勘違いしてほしくないのですが、私は淡水魚が好きなのでニシキゴイも好きです。逃げ出さないよう管理された池で大事に飼育されるニシキゴイはとても美しいです。非常に寿命が長く繁殖可能な年齢になるまで数年かかるコイのような魚を用いて、これほど模様や色彩の変異を作り出し、見事な観賞用品種を作り上げた先人の努力は称賛する以外に言葉はありません。

しかし、そうして非常な努力をもって改良されて作り上げた外来系統のコイ、本来飼育下できちんと管理して飼育すべきコイを食べるでもなく安易に野外に遺棄し、あまつさえそれにより環境が保全されるというウソを子供に教えることが深刻な問題なのです。こうしたことが問題であることは少しずつ世間に広まってきましたが、コイの野外への放流、特に環境教育としての放流は21世紀の現在、百害あって一利なし、であることを関係者はよく理解する必要があります。

ついでに参考文献も挙げておきます。

★外来コイの生態系影響については以下の文献が参考になります。

松崎慎一郎(2013)湖沼における鯉の水質や生物群集に与える影響.日本魚類学会自然保護委員会(編),「見えない驚異“国内外来魚”どう守る地域の生物多様性」,p39-50.東海大学出版会,東京.

Matsuzaki, S.S., Mabuchi, K., Takamura, N., Hicks, B.J., Nishida, M., Washitani, I.(2010) Stable isotope and molecular analyses indicate that hybridization with non-native domesticated common carp influence habitat use of native carp. OIKOS, 119: 964-971.

Matsuzaki, S.S., Mabuchi, K., Takamura, N., Nishida, M., Washitani, I. (2009) Behavioural and morphological differences between feral and domesticated strains of common carp. Journal of Fish Biology, 75: 1206-1220.

Matsuzaki, S.S., Usio, N., Takamura, N., Washitani, I. (2009) Contrasting impacts of invasive engineers on freshwater ecosystems: an experiment and meta-analysis. Oecologia, 158: 673-686.

宮崎佑介・松崎慎一郎・角谷 拓・関崎悠一郎・鷲谷 いづみ(2010)岩手県一関市のため池群においてコイが水草に与えていた影響.保全生態学研究,15:291-295.

清水敬司(2016)ガシャモク復活に向けて その3~再生の切り札は水落し.わたしたちの自然史,134:1-6.(※福岡県内において外来コイの駆除後に希少水草が回復した事例)

★日本でみられるコイの系統や形態については以下の文献が参考になります。

Atsumi, K., Song, H.Y., Senou, H., Inoue, K., Mabuchi, K. (2017) Morphological features of an endangered Japanese strain of Cyprinus carpio: reconstruction based on seven SNP markers. Journal of Fish Biology, 90:936-953.

古川 優(1953)鯉の品種に関する研究(第3報) 所謂ヤマトゴイ(飼育種)とマゴイ(野生種)の形態の比較に就いて.滋賀県水産試験場研究報告,4:9-17.

馬渕浩司(2014)御代ヶ池のコイ:DNA解析からの知見.Mikuraensis,3:17-26.

Mabuchi, K., Senou, H., Nishida, M. (2008) Mitochondrial DNA analysis reveals cryptic large-scale invasion of non-native genotypes of common carp (Cyprinus carpio) in Japan. Molecular Ecology, 17:796-809.

Mabuchi, K., Senou, H., Suzuki, T., Nishida, M. (2005) Discovery of an ancient lineage of Cyprinus carpio from Lake Biwa, central Japan, based on mtDNA sequence data, with reference to possible multiple origins of koi. Journal of Fish Biology, 66:1516-1528.

Suzuki, R., Yamaguchi, M. (1980) Meristic and morphometric characters of five races of Cyprinus carpio. Japanese Journal of Ichthyology, 27: 199-206.

★コイ養殖関係

古川 優(1958)養魚池におけるヤマトゴイ及びマゴイの生態について.水産増殖,6:21-23.

滋賀県水産試験場(1916)琵琶湖水産調査報告第3巻,滋賀県

菅 豊(2005)錦鯉と鯉師の歴史と文化.ビオストーリー,3:38-47.

★IUCNが選定した世界の最悪外来種100(100 of the World's Worst Invasive Alien Species)にもコイが選定されています→(リンク

★ヤマトゴイ・ニシキゴイを含む改良品種由来の外来魚の問題については、2017年度日本魚類学会公開シンポジウム市民公開講座で行われた「第3の外来魚問題―人工改良品種の野外放流をめぐって―」で様々議論がされていまして、その講演要旨集が公開されています→(リンク

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余談ですが、この写真はよくコイが放流されている小さな川で大きな出水があった後、その河口の砂浜で撮影したものです。これ以外にもたくさんのコイが死んでうちあがっていました。大きな雨の後など、死んだコイが海の定置網に入るという話を漁師さんから聞いたこともあります。また、大きな雨の後に川からコイがいなくなったなんて話もしばしば聞きます。コイは本来大規模な水域に生息する魚と考えられるため、都市域の小河川に放流された外来系統のコイの多くは、大雨の後なすすべもなく海まで流されて、こうして非業の死を遂げているのではないかと考えられます。個体の命を大事にする、いわゆる動物愛護の観点からも、こうした放流行為に子供を加担させることの罪深さが見えてくるのではないかとも思います。

日記

11月になりました。寒くなってきました。。色々と終わっていないことが多く、焦っています。

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ミズオオバコです。このプラ船では毎年キクモやナンゴクデンジソウとともに栽培していたのですが、今年は8月末にうっかりして完全に干上がらせてしまい、すべてカラカラの干物にしてしまいました。ショック過ぎたのですがそれでもと一応水を入れておいたところ、ミズオオバコだけその後発芽し、2カ月でここまで成長して花がたくさん咲きました。これなら種子もたくさんできそうです。絶滅危惧種水草ですが、かつて水田雑草の一つであっただけに、条件さえあえば強いものです。しかしキクモとナンゴクデンジソウは音沙汰がありません。来春に発芽してくれることを期待しています・・。