オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

年度末に向けて調査などを進めています。

本日のとある川にて、シロウオが遡上して来ていました。これでハゼの仲間。すごすぎる透明な体は何度見ても感動します。

 

こちらは別のとある川にて、カゼトゲタナゴ。産卵期まではまだ間があります。今年も増えて欲しいものです。すごすぎる青いラインは何度見ても感動します。

 

ところで上記のカゼトゲタナゴは水田地帯の水路で採集したものです。水田や農業水路は色々な湿地帯生物が暮らす生物多様性豊かな場所ですが、一方で、「水田や農業水路は人工環境なのだから守るべき自然ではない」と思っている人は少なくないようですね。実は水田や農業水路は二次的自然環境として、生物多様性保全上重要な守るべき”人工的な自然”の一つです。「自然を守る」というのは色々な見方があってわかりにくく、環境問題として考えた場合には「生物多様性を守る」と捉えるとわかりやすいと私は思っています。守るべきは生物多様性であって、生物多様性が豊かな守るべき場所には人工のもの(二次的自然)と人工でないもの(原生的自然)があります。

二次的自然については、農林水産省関東農政局のこの解説がわかりやすいです↓

www.maff.go.jp

水田や農業水路に生息している生物は、本来は河川の氾濫原湿地に生息していた生物です。日本では氾濫原湿地の多くは水田地帯に改変され、破壊されてきたわけですが、水田の農業システムは自然の氾濫原湿地のシステムと似ていたので、その多くが水田地帯に移住して人間と共存してきました。近代までは。

しかし、農地の近代化が進み、水田地帯で人間と共存してきた生物の多くが絶滅に瀕することとなりました。水田地帯の生物多様性の劣化は、河川や海域の生物多様性の劣化にも波及します。そこで、農地の近代化と生物多様性の両立を目指し始めているのが現段階ということになります。もちろん、だから具体的にどうすればよいのかという点についてはケースバイケースで、現在のところ課題は多くあります。しかし生物多様性が失われれば我々の社会基盤が壊れ、農業どころではありません。なんとかその点だけは共有して、その上で、社会的課題として社会全体として、その解決策を考えて実行していきたいものです。

 

日記

年度末は委員などの仕事も多く、出張が続いています。先日はTOKYOでとある委員会があったので、せっかく関東まで来たついでに群馬県まで行ってきました。

ということで来たのはコチラ!群馬県板倉町雷電神社です。

由緒正しきこの神社はかつて湿地帯の真ん中にあったという素晴らしい歴史を持っています。そして、湿地帯の真ん中にあったことからもわかるように周囲にはいまだ川魚食文化が残っており、川魚料理屋が数件あります。そして名物はナマズです。

 

念願のナマズ天ぷらとたたき揚げを食べることができました。ナマズのおいしさが濃縮された天ぷら、どこか懐かしい感じのもあっとしたたたき揚げ、大変美味でここまで来たかいがありました。

めったに来れるところでもないので散財です。味噌汁をコイこくに変更した上に、コイのあらいもつけます。つけあわせの小魚はモツゴでした。非常に淡水魚度が高く、満足度は500%以上でした。

 

ナマズは天然だそうです。

 

本殿裏の社務所には大きな「なまずさん」が鎮座しています。これも今回、見たかったものです。

300円でハンカチを入手して、丁寧になでることで、厄除けになるそうです。当然挑戦します。後ろのナマズを抱きかかえている鬼(雷神?)も良い味わいです。

なでます。太宰府天満宮の牛と同様に、このなまずさんもみんなに撫でられて金色に輝いていました。これはご利益がありそうです。新型コロナ蔓延時期には新型コロナ対策として触れないようになっていたという情報もありましたが、今回は解禁されていたようでした。撫でまわしてきました。

 

関東地方のナマズは江戸時代くらいに持ち込まれた外来種という説が主流です。魚類学者のはしくれとしては、関東のナマズは本当に外来なのかということや、外来であったとしたら地域の淡水生物相にどのような影響を与えたのかなどは気になるところです。しかしこうして興味深い文化にもなっており、こうなってはいつまでも続いて欲しいものと思います。生物多様性の文化的サービスの一つと言えるでしょう。良い経験をしました。

日記

2月2日は世界湿地の日です。今日です。ということで昨年2023年に訪れた素晴らしい湿地帯の風景を紹介します。

ため池。ルイスツブゲンゴロウがたくさんいました。

塩性湿地。クロチビミズムシとキタミズカメムシが無限にいました。

渓流。イシドジョウがいました。

埋立地に造成された湿地帯ビオトープ。生物はいれていませんが、勝手にどこかからやってきて多くの生物が暮らしています。

海苔が好きな人、昆布やイリコの出汁のうどんがないと生きられない人、多様な握り寿司最高と思う人、国産アサリ味噌汁食べ続けたい人、全員、あらゆる湿地帯を大事に思って、生物多様性保全と再生を応援してください。すべての湿地帯と湿地帯生物と我々はつながっています。

日記

とある方からサバヒーをいただきました。どうもありがとうございます!標本にして撮影。

新鮮な個体はこんな色なのか!ということで学びがありました。サバヒーは幼少時に愛読していた山渓カラー名鑑日本の淡水魚にも載っていて、基本的には海水魚ですが淡水にも入ってくる魚ということで、いつか実物を見てみたいと思っていました。九州本土でも採れることがあり(標本は見たことがあります)、いつか自分でも採ってみたい魚の一つです。



自宅で湿地帯ビオトープ大賞

ということで「自宅で湿地帯ビオトープ大賞」を開催しています。詳細は「自宅で湿地帯ビオトープ!」出版社の大和書房さんのサイトに↓

www.daiwashobo.co.jp

趣旨は「2023年度もっとも素晴らしい自宅の湿地帯ビオトープを称える」ものです。参加希望者はX(旧ツイッター)にて、「 #自宅で湿地帯ビオトープ大賞」のタグとともに、一言コメントと写真を1つのポストとして投稿してください。Xアカウントがない方は電子メールでも参加可能です。上記HPにメールアドレスがありますので、そちらからどうぞ。

Xでの投稿例はこんな感じです↓

応募者の中から1名様に大賞として、オイカワ丸&大童澄瞳&トガシユウスケのトリプルサイン本(自宅で湿地帯ビオトープ!)&オリジナル缶バッジを進呈いたします。また、これは!という湿地帯ビオトープには審査員協議の上で、適宜賞をつくってオリジナル缶バッジを進呈いたします。ということで2023年、自宅で湿地帯ビオトープをつくってしまった皆さんからのたくさんのご応募お待ちしております。よろしくお願いします。応募締め切りは2024年2月28日です。

 

新年

遅くなりましたが2024年も湿地帯中毒は続きます。今年もよろしくお願いします。

今日はようやく湿地帯初めに行ってきました。調査です。しかし昔は1月1日は必ず湿地帯に行っていたのに、これが老いというものでしょうか。残念です。

さて、今回は昨年に某筋肉湿地帯隊長から情報いただいた(ありがとう!)某湿地帯生物がみつかったという某湿地帯をようやく訪問しました。詳細情報はありませんでしたが、まあだいたいのあたりで、おそらくここという場所に行きつきました。ところが水がありません!しかしながら雪の積もった猪苗代湖岸からエサキナガレカタビロアメンボを掘り出したこの私(リンク)にとっては無問題です。秘儀を使い無事に某湿地帯生物を確認しました。うむ。

今年も湿地帯活動をがんばっていきたいと思います。

 

日記

ということで2023年最後の更新となります。今年も一年間どうもありがとうございました。

2023年最大の出来事はやはり「自宅で湿地帯ビオトープ生物多様性を守る水辺づくり(大和書房)」の出版でした。同じくビオトープを趣味とする漫画家の大童澄瞳先生に表紙ほか描いていただき、生物多様性とは何か?生物多様性を守るビオトープとは何か?湿地帯の魅力とは?というところについて、これまで届けることができなかった人々に届けることができたのではないかと思います。本を読んで自宅で湿地帯ビオトープをはじめたという方も多くいたようです。うれしいです。

ということで関連して書いたブログ記事を以下にまとめます。

まずは出版時の↓

oikawamaru.hatenablog.com

それから、蚊の問題についての補足↓

oikawamaru.hatenablog.com

それから岸部の構造についての補足↓

oikawamaru.hatenablog.com

そもそもの発端は趣味の庭の湿地帯づくりを紹介したこの記事でした↓

oikawamaru.hatenablog.com

面白そう~~と思った方はぜひとも、来年は自宅に湿地帯ビオトープを作ってみて下さい。その際にそのビオトープ生物多様性の破壊につながってはいけません。生物多様性の破壊につながらないビオトープとは何か?その知識が「自宅で湿地帯ビオトープ生物多様性を守る水辺づくり」に書かれています。そう難しいことではありません。いくつかの知識があれば簡単です。機会があればぜひ読んで、挑戦してみて下さい。

www.daiwashobo.co.jp

で、あまり進まなかった研究の方ですが、それでも共同研究はいくつも面白いものを発表することができました。その中で最大の成果は、新種ナギサミズカメムシNagisavelia hikarui Watanabe, Nakajima & Hayashi, 2023の発表でしょうか。発見者のNAGANOさん、そして超人的に研究を主導していただいたWATANABEさんのおかげであることは言うまでもありません。ありがとうございました。本種のタイプ産地は福岡市です。身近な環境にまだまだ未知の湿地帯生物が暮らしていること、そして身近な環境を守ることの大切さを多くの人に知ってもらうきっかけになればうれしいです。

oikawamaru.hatenablog.com

湿地帯中毒はまだ続きます。引き続きよろしくお願いいたします。