オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

ドジョウ(在来)、ドジョウ(外来)、カラドジョウ(外来)の区別点についてよく質問があるので、図をつくりました。参考にしてください。生物というのはどうしても個体変異とかあるのと、この3つのドジョウは交雑することが知られているので、100%一致しないどっちつかずの個体もいます。が、それぞれの特徴を組み合わせて見れば、だいたい迷わず形態から同定できると思います。また、体表の模様は変異が多く、あまり同定のあてにならないです。一般的に国内に定着しているカラドジョウは模様が目立たない個体が多いようです。

さらにドジョウ(在来)にもいくつかの地域集団がいることは間違いないので、在来だからその辺に放流しまくってよい、というわけではありません。地域のドジョウを大事にしていくこと、生物多様性保全の上で重要です。買ってきたドジョウをその辺に放流するのはやめましょう。

 

ドジョウの在来・外来問題については、かつて書いたこちらのブログ記事もあわせてご覧ください。

oikawamaru.hatenablog.com

日記

豪雨の影響で調査がずれこんでいます。今週は連日湿地帯。湿地帯好きでなければとても持ちませんが、幸い湿地帯中毒なので大丈夫です。

ということで、ミゾナシミズムシCymatia apparens
某筋肉S氏に教えてもらった場所にて。情報ありがとうございました!県内で出会ったのはかなり久しぶりです。この野外でも一目でわかるスマートかつ独特のオーラが最高な水生昆虫です。この産地はかなり安定してそうで、ひとまず安心。全国的な希少種です。

論文

日本産コガシラミズムシ科の総説です!

Hayashi, M., Iwata, T. Yoshitomi, H. (2023) Revision of the family Haliplidae (Insecta, Coleoptera) in Japan. Zookeys, 1168: 267-294.

zookeys.pensoft.net

日本産2属13種を認め、うち1種は新種、1種は日本初記録種となっています。本論文でこれまで長らく若干混乱していた日本のコガシラミズムシ相はほぼ完全に把握できたと言っても良いでしょう。図版は美しく、同定ポイントもよくわかります。眺めているだけで楽しいです。

で、肝心の新種はミゾナシコガシラミズムシHaliplus morii Hayashi, Iwata &Yoshitomi, 2023で、タイプ産地は山形県。今のところタイプ産地以外の採集例はないようです。クビボソコガシラミズムシに似ているものの、前胸背に1対の溝がないことで外部形態からも区別が可能なようです。

それから日本初記録種がウスチャコガシラミズムシ Haliplus angustifrons Régimbart, 1892で、南西諸島(徳之島、沖縄島、伊平屋島久米島石垣島西表島)からの記録となります。国外では東南アジアから南アジア(ベトナムラオスミャンマー、ネパール、スリランカパキスタン、インド)にかけて広く分布する種のようです。本種は業界で「コウトウコガシラモドキ」などと呼ばれてその存在は認知されていましたが、ついに学名が決まったということになります。本物のコウトウコガシラミズムシH. kotoshonisは近年の記録が少ないようで、危機的な状況かもしれません。なお、ネイチャーガイド日本の水生昆虫に掲載の2枚の写真はいずれも本物のコウトウコガシラミズムシです。コウトウコガシラミズムシでは頭部に黒色斑紋がありますが、ウスチャコガシラミズムシではありません。したがって外部形態でも区別可能です。

そしてこちらがそのウスチャコガシラミズムシ Haliplus angustifrons Régimbart, 1892であります。頭部の模様の他に、実際に薄茶色っぽく、この和名はイメージに近いです。

それから本論文の個人的にもう一つ重要なトピックとして、国外の文献上で日本からの謎の分布記録があったHaliplus diruptusとH. davidiについても結論が付いたのが喜ばしいです。すなわちH. diruptusはコウトウコガシラミズムシH. kotoshonisのシノニムとして処理されました。実はVondel (2017)においてH. davidiはH. diruptusのシノニムとして処理されていたそうなので、ようするにこれらはいずれもコウトウコガシラミズムシのことであったということになります。コウトウコガシラミズムシの分布を整理すると、南西諸島(宝島、沖縄島、石垣島西表島与那国島)、台湾、中国、ベトナムミャンマーということになります。

 

コガシラミズムシ類は外部形態の特徴からもかなり同定ができること、それぞれの種の環境へのこだわりが強いこと、また、クビボソコガシラミズムシ、カミヤコガシラミズムシ、クロホシコガシラミズムシ、コウトウコガシラミズムシ、キイロコガシラミズムシ、ヒメコガシラミズムシ、マダラコガシラミズムシなど希少種として扱われているものも少なくないことから、止水性湿地の環境指標としても適していると思われます。幼虫はシャジクモを食べるものやアオミドロを食べるものなども知られており、生態も興味深いです。さらに言えばどの種も個性的で、色形模様すべてが異彩を放っており魅力的です。都道府県ごとの分布情報はまとまったものがまだない状況と思われますが、今後関心が高まり、各地での知見が集まることが期待されます。

日記

いわゆる昆虫ハウスとかインセクトホテルとか言われるものをつくってみました。本当は5月につくる予定だったのですが、病に倒れたりして今日になってしまいました。

以前にポン氏と工作した鳥の巣箱が壊れて放置されていたので、これを利用しました。すでに屋根はとれています。

 

ということで入り口のパネルを取り外しました。ゴム槌でぶっ壊しました。

 

その辺から拾ってきた竹筒をあうように切っていきます。ちなみにこの後で私はのこぎりで手を切ったので手袋は必須です。必ずしましょう。素手はダメです。

 

切った竹筒をつめてみました。適当です。もちろん手袋はしています。

 

ということで軒下に設置しました。良い感じです。筒タイプなので、オオフタオビドロバチやコクロアナバチ、オオハキリバチなどが利用することが期待されます。ちょっと時期が遅い気もしますが、誰かが利用してくれるとうれしいです。ドロバチ類はガの幼虫などを集めてこの筒の中に詰めて卵を産み、泥で蓋をします。つまりこれらのハチ類がうろつくようになれば、家庭菜園の害虫対策としても期待できます。

 

こちらは海の中道海浜公園の中にあった昆虫ホテルです。将来的にはこれくらいの規模のものを目指したいです。

日記

2020年に「ネイチャーガイド日本の水生昆虫(リンク)」という図鑑を出したのですが、それを機に「日本産真正水生昆虫リスト(リンク)」というものを作成・公開して更新し続けています。図鑑というのは非常に使いやすくて知見も広まり有用なものですが、一方で出した瞬間から情報が古くなるのはやむを得ないことでして、その点をカバーしようと思って始めたものです。多くの方からの協力もあり、そこそこ役立つリストとなっていますが、何より自分に一番役立っています。やっぱり趣味でやってるのは自分に一番役立つ必要があります。

さてこのリストでは分布情報もまとめていますが、とても全種について都道府県レベルまでは追えないので、北海道、本州、四国、九州、対馬、南西諸島、大東諸島、伊豆諸島というレベルで整理しています。ただし色々な事情からいくつかの種については都道府県で追っているものがあり、例えば塩性湿地に生息する3種のガムシ、オオトゲバゴマフガムシ、エンデンチビマルガムシ、アリアケキイロヒラタガムシもその一つです。もし記録に見落としがあれば情報提供いただけるとありがたいです。

こちらそんな塩性湿地です。海岸沿いにあり少し塩分を含む塩性湿地は、いまの日本列島では失われつつあるとても貴重な環境です。そうした環境でしか生きていけない水生昆虫たちがいることも広く知られればと思います。

 

オオトゲバゴマフガムシです。

アリアケキイロヒラタガムシです。

この他に、エンデンチビマルガムシ、コヒラタガムシ類似種、クロチビミズムシ、ホテイコミズムシ、サキグロコミズムシ、キタミズカメムシなどが代表的な塩生湿地を好む水生昆虫類です。

日記

東京都内某所での湿地帯調査に参加してきました。秘密任務です。ここは私が幼少時に採集をしたことがある場所です。

見た目は変わらず、都内でも貴重な素堀の水路です。水もきれいです。

 

ムカシツチガエルです。私が幼少時はツチガエルでしたが、近年の研究で東日本産は別種であることがわかりました。これはその新しく別種になった方ということになります。

 

トウキョウダルマガエルです。幼少時のなじみのカエル。大型個体に出会えてうれしかったです。もちろん九州にはいません。

 

アブラハヤ!これも昔馴染みです。九州にはいません。

 

ムサシノジュズカケハゼ!私が幼少時はただのジュズカケハゼでしたが、近年になってジュズカケハゼも複数種を含むことが判明しました。ただしこの種についてはまだ学名未決定です。もちろん九州にはいません。

 

ホトケドジョウ!当時たくさん捕まえた記憶がありましたが、健在でほっとしました。こちらも九州にいません。

 

ヒガシシマドジョウ!この水系ではおなじみです。以前より増えている気がしました。九州にはいません。

 

しかしながら、カワムツ、です。国内外来種です。九州ではどこにでもいると言って良いくらい普通の魚ですが、私が幼少時にはこのあたりには間違いなくいませんでした。

 

それからカワヨシノボリです。こちらも国内外来種です。九州にいる種ですが、九州産とは少し見た目が異なります。どこ由来でしょうか?

 

ということで調査の結果、30数年前にいた湿地帯生物の多くが生き残っていることがわかった一方で、これまでいなかった外来種が定着・増加していることもわかりました。外来種が定着・増加しているということは、在来種が使っていた何らかの資源を利用している、ということです。つまり在来種に何らかの悪影響を与えていることは間違いないでしょう。30数年前と比べて、やはり生物多様性の状況は悪化しているようです。

日記

シーズンなので連日湿地帯調査の日々です。中毒なので問題ありません。

素晴らしい渓流のエコトーン!

 

水路と水田と休耕田から構成される素晴らしいエコトーン!

 

素晴らしい干潟のエコトーン!無限とも思われる湿地帯生物が暮らしていました。

 

一方でエコトーンがまったくない、河川。生物多様性にまったく配慮していないデザインであると同時に、こんなにコンクリートむき出しでは気候変動対策にも悪影響では。河川法にある河川管理の目的、治水利水環境保全、どこにいってしまったのでしょうか。環境を守るというのは、我々の暮らしを守るということです。

 

こちらはここ2年ほど4ヶ月に一回定期的に調査していた場所。川底がコンクリートで固められていました!ショックです。。あんなにたくさんいた川虫たちはすべてコンクリの下に生き埋めでしょうか。なぜか部分的にコンクリが張られていない場所があり(写真中央)、ここにはタカハヤをはじめたくさんの湿地帯生物がいました。環境配慮なんでしょうか。微妙ですが。それにしても全体をここまでする必要があるのでしょうか。

 

カジカガエルです。カッコいい!生物多様性と共生する社会をつくることは、我々が持続する上でとても重要なことだと思います。変わりつつあることを実感する出来事は少なくないですが、しかし、根本的なところはほとんど何も変わっていません。私が好きな湿地帯は破壊され続け、湿地帯生物はどんどん滅んでいきます。どうしたら世の中が変わるのかなということを日々考えています。