オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

鈴木寿之・陳 義雄(2011)田中茂穂博士により記載されたヨシノボリ属3種.大阪市立自然史博物館研究報告,65:9-24.
著者の方から別刷をいただきました。感謝いたします。先日のクロヨシに引き続きヨシノボリ類の分類学的研究です。田中茂穂博士が記載した3種のヨシノノボリ属は今の和名でいうところの何であったのか?、という観点からまとめられています。田中博士が記載したヨシノボリはkatonis、kurodai、fluviatilisの3種。いずれもタイプ標本が残っているということで詳細な検討を行っています。
結果として、katonisはシマヨシノボリ、kurodaiはトウヨシノボリ偽橙色型、fluviatilisはオオヨシノボリに該当することが確認されました。さて、ここからがスタート地点ともいえます。学名というのは一番最初に付されたものに先取権がありますので、この学名が有効かどうかを決定するには、この3種に該当するものがこれ以前に記載されているかどうかを調査する必要があります。記載年はkatonisが1908年、kurodaiが1908年、fluviatilisが1925年ということで、これより古く記載されている種の形態について色々と調査した結果(この部分が面白いんで、興味ある方はぜひ読んでみてください)、現在でも有効と考えられるのがkurodaiとfluviatilisの2つと結論づけています。
すなわちこの論文では和名・学名の対応関係はトウヨシノボリ=Rhinogobius kurodai (Tanaka, 1908)、オオヨシノボリ=Rhinogobius fluviatilis Tanaka, 1925、と結論づけています。ちなみに模式産地は前者が東京都港区(黒田侯爵邸庭園内の池)、後者が兵庫県姫路だそうです。
シマヨシはどうなったんだー、とか偽橙色型以外のトウヨシは誰なんだー、とかいう声が聞こえてきそうですが、これらの件については次回作に続く、、となっています。続編が楽しみです!!