水物採集に良い時期になってきました。近年では色々な外来種問題も起こっており、採集者として自らが外来種をばらまくようなことにならないよう注意しないといけません。最近注目しているのが外来藻類です。
矢作川研究所の会誌Rio(リンク)の2016年10月号に「日本に侵入している外来珪藻」という一般向けの解説記事が出ているのを教えてもらいました(リンク)。ミズワタクチビルケイソウという外来珪藻が筑後川はじめ、九州と本州の各地で発見されており、釣り人や調査者の胴長底のフェルトや網などに付着してさらに広がる可能性が危惧されています(この種の発見そのものは以前にブログ記事で論文紹介しています→ リンク)。
海外では外来珪藻問題としてニュージーランドの渓流に侵入したディディーモというのが知られており、非常に大きな問題になっているそうです(この問題を受けてすでに使用済み調査機材の持ち込みが禁止されているということです。)それでは、どうすればこういった外来藻類の拡散を防げるのかというところですが、例えば海外でよく調査されている研究者の方はツイッターで以下のような対策を紹介していました。
今回使用した装備を漂白中。新たな外来種を作りださないために、海外で使用した道具のクリーニングは欠かせません。特に、水絡みの微小な生物は下水経由で環境にばらまいてしまう可能性があるので、漂白前に洗い流したりせず、付着した汚れごと塩素系漂白剤で一晩以上処理するようにしています。 pic.twitter.com/gW2as2ppu3
— ルウオマンソラプチ川 (@graphelmis) 2017年4月1日
ちなみに私はよく洗浄した後に、逆性石鹸液につけて、日光でよく乾燥させ、70%エタノール噴霧をして使用するようにしています。胴長は3着ローテーションしているので、乾ききらない間に他の水系での調査に使わないようにしています。(※2021年3月追記:汚水管に直結している流しでは先に洗っても問題ないと思いますが、雨水管の方面にいく場合には洗浄時にばらまいてしまうリスクがあります。ということで基本的には先に石鹸液につけた方が良いようです。今後私も変更します。)
ただ一番シンプルで効果が高いのは熱湯消毒でしょう。フェルト底に熱湯を注ぐだけで効果的です。
このあたりの対策法については日進月歩だと思いますので、より良い方法があれば教えて下さい。ちなみにフェルト底そのものがよくない、ということもわかっていまして、例えばコモチカワツボという外来巻貝はこのフェルトの靴底に紛れて移動することが示唆されています。ただ使用感を考えるとなかなか良い代わりの靴底の胴長がないのですよね。。こちらも情報収集中です。よろしくお願いします。
2022年3月3日追記 長野県水産試験場から注意喚起の文書が出ました(リンク)。これによればミズワタクチビルケイソウには、5%塩水、60℃以上のお湯、濃度50%以上のエタノールのいずれかに1分間浸けると効果があるようです。