オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

対馬で再発見されたカワウソがどうやらユーラシアカワウソで、オス2頭メス1頭の最低3頭いるらしいということが環境省から発表されていました(リンク)。自然の分布拡大なのか、人為的なものなか、もう少し見守りたいと思います。しかし朝鮮半島から自力でやってきた、自然の分布拡大による個体だったら良いなあというのが、湿地帯生物愛好家としての率直な気持ちです。実際韓国での保全はうまくいっており個体数が増加傾向にあるそうなので、沿岸域にも生息する哺乳類であること、海流の向きなどから、自然の分布拡大の可能性も十分に考えられます。とりあえずニホンカワウソの原記載論文をメモしておきます。
Imaizumi, Y., Yoshiyuki, M. (1989) Taxonomic status of the Japanese Otter (Carnivora, Mustelidae), with a description of a new species. Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology,15: 177-188.(PDF
実は対馬にもともといたカワウソがどちらなのか、という点ははっきりしていません。この記載論文でもニホンカワウソの分布域は本州、四国、九州とあり、一方でユーラシアカワウソの分布域はヨーロッパ、ロシア、シベリア、中央アジア、中国、台湾、韓国、北海道、セイロン、インド、ミャンマー、アッサム、スマトラペルシャパレスチナ、モロッコアルジェリアとあります。こういう分布パターンの種を色々妄想すると、対馬にいたのはユーラシアカワウソだったんじゃないの、とだいたいの生き物オタクは思うのではないでしょうか。日本列島におけるカワウソの分布様式は本来かなり複雑で学術的にも貴重なものだったのかもしれません。詳しく調べる前に絶滅させてしまったので、今となってはほとんど検証不可能であることが、本当に残念です。
もし、対馬にもともと分布していた種がユーラシアカワウソであり、今回対馬で再発見された個体が自然の分布拡大に由来するのであれば、これはもう申し分なく保全対象になることでしょう。今後の展開を期待したいと思います。
自称カワウソ愛好家なのでかつてこのブログでもいくつか論文紹介しています。ついでにどうぞ↓
佐々木浩(2016)日本のカワウソはなぜ絶滅したのか.人間文化研究所年報,27:95-111.論文紹介→(リンク
Waku, D., Segawa, T., Yonezawa, T., Akiyoshi, A., Ishige, T., Ueda, M., Ogawa, H., Sasaki, H., Ando, M., Kohno, N., Sasaki, T. (2016) Evaluating the phylogenetic status of the extinct Japanese otter on the basis of mitochondrial genome analysis. PLoS ONE, 11: e0149341. 論文紹介→リンク
久志本鉄平(2014)下関市蓋井島の海岸で採取されたカワウソの頭骨.豊田ホタルの里ミュージアム研究報告書,6:19-22.論文紹介→リンク

それから、文一総合出版のWEB雑誌BUNAにおいて、東京農業大学の和久大介博士が現時点でのカワウソ情報をわかりやすく解説しています。カワウソ愛好家は必読→リンク