オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

今年も大変な豪雨災害がありました。人為的な環境破壊を原因とする気候変動により、想定外の場所に想定外の大雨が降るということが、毎年相次いでいます。日本において治水は長らく政治の最重要課題であったわけですが、これまでの治水の方針では被害を抑えられないということから、数年前から国交省も「流域治水」という方針を明確にしています。治水と生物多様性、は私が研究をする上での一つの重要なテーマでもありまして、非常に興味をもってこのあたりの方針を見ております。

ということで国土交通省による「令和7年度 水管理・国土保全局予算概算要求」が出ておりました。

www.mlit.go.jpまあ色々あるんですけど、河川法の趣旨にある通り、改めて「治水・利水・環境」のバランスをとって進めていくというところと何よりも「流域治水」が前面に出ています。

 

2023年に「生物多様性国家戦略2023-2030」、「グリーンインフラ推進戦略2023」が発表され、ネイチャーポジティブ社会推進が国の方針として明確化していることを受けて、本資料でも生物多様性に関する部分は強く意識されている印象です。

 

 

つまり「治水」だけではだめだ、という国の方針は明確なわけですが、社会実装をして成果を出す上で何よりも重要なのは、やはり地方自治体の河川技術者にこの「意識」が届くかどうかです。2023年になって大きく転換した部分ですが、決裁権者が旧来の意識に縛られていては、なかなか進みません。しかし役所というのは法令に沿って税金を使って事業をする部署ですから、転換しない、などとのんきなことを言っている間に国民の資産である生物資源を損壊していくということがあってはなりません。この理想と現実の部分、どうやったら埋まるのかなということを、最近はしばしば考えています。現実として、河川法の趣旨に反して、治水が優先され環境が破壊されている状況をいくつも目の当たりにしているからです。

こちらは昨年から私が研修などで使っているスライドです。流域治水に挙げられているメニューは、うまくすれば確実に生物多様性の再生にもつながります。つまり一石二鳥ができます。しかし、その「意識」がなければさらなる環境破壊を呼び込みます。これは確実に。治水はインフラを守るものですが、生物多様性は社会のインフラそのものであるということ、そして土木は社会を豊かにするものであること、この部分の理解を深め進めていかなくてはいけません。土木技術者はもちろんですが、これは社会の構成員である我々一人一人も、きちんと理解しておかないといけない部分であると思います。