オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記その2

今日午前中はクリスチャン・ゲルディ(Christian Goldi)氏の講演が大宰府であったのでそれを聞いてきました。近自然工法(Neo-Natural River Reconstruction)の父とも呼ばれている有名な方で、スイスをはじめヨーロッパ各地の河川で氏が手がけた数多くの事例は日本の多自然川づくりにも大きな影響を与えています。韓国でのシンポジウムのついでに福岡に来られるということで、一週間くらい前に突如決まった講演会ですが、研究者のみならず民間で保全をしている人たちや行政の人たち、あるいはコンサル関係など様々な立場で川に関わっている人たちがたくさん来ており盛況でした。ヨーロッパで長年にわたり行ってきた数々の近自然工法の事例と、それに至る過程やその都度における理念の紹介は大変示唆に富み、また興味深いものが多かったです。

氏は講演の中で、河川や水路の環境修復に理解を得るには、研究者や事業施行者が足繁く現場に通いそこに住む人たちと議論を重ね、人間活動と共存できる落し所をぎりぎりまで探ることが、どんな事例でも重要であるという趣旨の発言をしていました。ヨーロッパは近自然工法の先進地域ですが、それも決して文化的にそういう土壌だというわけではなく、研究者や行政が地道な作業を積み重ねた結果であることが良くわかりました。
小さなため池が埋められるとか、裏山の雑木林が伐採されるとか、そういった「あまりたいしたことなさそうな」場合でも、そこで失われるものと得られるものが何かを科学的に捉えて、開発と保全の線引きをしていくような作業を誰かが積み重ねていかないと、結局この先日本の自然環境は何も変わらないのではないかと思いました。保全上重要だとか絶滅しそうだから研究したとか、そういう背景で論文を書いているような研究者は特にそういう場面に積極的に関わっていく責任があるでしょう。

平日の大宰府はすいていた。昔は良くムササビを見に行ったものです。良く考えたらかなり久しぶりかも。