オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Miyazaki, J., Dobashi, M., Tamura, T., Beppu, S., Sakai, T., Mihara, K., Hosoya, K. (2011) Parallel evolution in eight-barbel loaches of the genus Lefua (Balitoridae,Cypriniformes) revealed by mitochondrial and nuclear DNA phylogenies. Molecular Phylogenetics and Evolution, 60: 416–427.
たまには論文紹介。ホトケドジョウの系統地理論文です。著者らの研究グループによる成果は長らく色々なところで発表されてきましたが、これが決定版と言えるものです。用いた標本としては、大陸産近縁種も数地点づつ満遍なく含めており、移入とされる国内ヒメドジョウも2地点、そしてホトケドジョウナガレホトケドジョウの採集地点もかなり網羅的です。それから解析した遺伝子領域もミトコンドリアDNAと核DNAの部分塩基配列を用いています。
結果となるFig.2とFig.3を眺めると、なるほど、色々な妄想が膨らみます。特に興味深いのは北陸集団で、ミトコンドリアDNAの方では東海地方のナガレホトケドジョウホトケドジョウ集団よりも外側で分岐しています。核の方ではホトケドジョウ集団の中に入っています(それでも一番外側ですが)。
ということで私の方で興味があるのは、それらの集団ができた経緯もさることながら(それは考察で触れられています)、これらの集団に形態的差異はどのような形であるのかないのかというところです。一度実物を拝んでみたいものです。それからホトケドジョウの学名(Lefua echigonia)を見てもわかるように模式産地は北陸(Nagaoka, Niigata)なので、この遺伝的にちょっと変なものが真のホトケドジョウということにもなり、その点も心惹かれます。
ホトケドジョウは私の生まれ育った八王子にはたくさんいて、子供の頃はよく捕まえて遊んでいました。しかしホトケドジョウをバケツいっぱい捕まえた思い出深い水路は、水田がなくなったことで数年前からもう水が流れなくなってしまっていました。なんとも残念なことです。

滋賀県産のホトケドジョウです。この魚は九州にいないんですよね。久しぶりに会いたくなってきました。