オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

先日野外調査に行った折に、とある衝撃的な工事現場を見てしまい、落ち込んでいます。昨年からたびたび申し入れていて、それなりに先方も対応をとってくれていたのに、肝心なところで連絡がうまく行っておらず、その生物は全滅しているように見えました。今回の件でこの生物はこの水系から絶滅した可能性が高くなってしまいました。
何故こんなことになってしまったのか。理由としては、1.改修計画の全貌をはじめにきちんと把握しなかったこと。2.私の専門家としての実力不足。3.工事を行う側と専門家的立場の人が同じ組織だった。ことなどが挙げられるでしょうか。
1についてはそもそもこの水路の改修を回避できていれば事態はだいぶ違ったという思いがあります。改修計画を知ったのが別件の本流の堰の工事図面を見ていた時で、その時点で水路の方のあれこれはすでに完了していました。ここですでに一歩出遅れました。本流の堰を改修するのであれば、そこから取水している水路にも手が入ることが予想できたはず。堰については半年くらい前から話を聞いていたので、水路も含めた計画の全貌をはじめの段階できっちりと把握しておけばこうならなかったかもしれません。設計が終わり受注業者が決定した段階ではいろいろと回避不可能でした。
2については、その計画の全貌を見通すということを出来なかったというところにも実力不足が垣間見えますが、とりあえず同水系の別の場所とか、下流側に移植するなどして、もっともっと慎重に手を尽くすことが出来たかもしれないというところです。今回も、半分は水路の上流側に移して、半分は職場に持ち帰って工事後に元の場所に移す、ということをしたのですが、あろうことか水路の上流側と再放流した場所を干上がらせて工事をしていました。こちらからはこことここに放流してあるということは言っているわけで、信じられないミスだと思います。ですが、失敗したら取り返しがつかないことなわけで、専門家の方こそこういうことも予想して二重三重に安全策を講じておくべきではなかったかと思うわけです。
そして、3もちらつきます。やっぱり同じ組織ということもあり、立場上強く言い切れない、向こうも強気に出られる、守秘義務もあり外部に相談も出来ない、などもあり、組織内のおかかえ専門家としての立場でしか動けませんでした。あまり協調性のない振る舞いをすると、やっぱりまわりにも迷惑がかかるし、しずらいものがあります。
などとウダウダ考えていてもようするに取り返しがつかない。こんな事態をなくそうと今の職場を選んだのに結局何も出来ていない。今回の件がすごく心にひっかっかるのは、ダム工事みたいにどうしようもない、というものではなく、ちょっと指先に引っかかっていたのに、ことごとくすり抜けて取り返しがつかないことになってしまったというところにあります。ある水系から一種の生物が絶滅した瞬間に立ち会ってしまったという事実と重みに、しばらく立ち直れそうもありません。