オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

上手雄貴(2012)日本産キタマルヒメドロムシ属(和名新称)について(ヒメドロムシ科).さやばねニューシリーズ,8:22-26.
Kamite (2009,2011)における日本産Heterlimnius属の分類学的処置についての日本語解説。内容としては従来和名のなかったHeterlimnius属にキタマルヒメドロムシ属という和名を提唱するとともに、Kamite (2009,2011)で報告された内容、すなわちOptioservus kubotai(クボタマルヒメドロムシ)がO. hasegawaiの、O. hayashii(スジヒメドロムシ)がO. ater(クロマルヒメドロムシ)のそれぞれシノニムであり、いずれもHeterlimius属に移された、という経緯とそれぞれの区別点・分布域などを詳細に解説しています。和名の観点からするとクボタマルヒメドロムシが学名変更、スジヒメドロムシがクロマルヒメドロムシに吸収合併して消滅、というイメージです。
ということで日本産キタマルヒメドロムシ属は、クボタマルヒメドロムシHeterlimnius hasegawai (Nomura, 1958)とクロマルヒメドロムシHeterlimnius ater (Nomura, 1958)の2種となります。
掲載誌は日本甲虫学会の和文誌です。英語の分類学の論文はなかなかそのスジの人でないと読むのが難しいので、このような一般向けの解説がこのような媒体で発表されるのは大変有益です。また、水生甲虫類は国土交通省の河川水辺の国勢調査などでも対象となってきますので、応用面での貢献も大きいと思います。図も豊富で非常にわかりやすく、読んでいて面白いです。元論文は以下の2報。
Kamite, Y. (2009) A revision of the genus Heterlimnius Hinton (Coleoptera, Elmidae). Japanese Journal of Systematic Entomology, 15: 199-226.
Kamite, Y. (2011) Three new species of the genus Heterlimnius (Coleoptera, Elmidae) from Asia. Japanese Journal of Systematic Entomology, 17: 409-411.

クロマルヒメドロムシHeterlimnius ater。本文でも指摘されていますが、スジヒメと一緒であったということになると、実は真っ黒のクロマルのほうが少ないのです。ここの産地のは全部真っ黒で超カッコよかったです。

採集した場所。山形県某所。崖から湧き出した水を集めた細流(写真の赤い囲み中)というかなんかそういう流れの中にたくさんいました。2007年9月のこと。

ちなみに著者の上手氏は私の従兄弟(年齢は一個下)なんですが、一族そろってヒメドロムシ好きという狂った家系ということではなく、私と彼の二人だけですからどうぞ安心してお付き合い下さい。