オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

北野 忠・今井秀行(2012)福岡県で採集された九州初記録のドブガイモドキ.日本生物地理学会会報,67:193-196.
基本的にあまり動きがない日本産イシガイ科二枚貝類ファウナに動きがありました。これまで国内では石垣島のみで生息が確認されていたドブガイモドキCristaria tenuisが、九州本土から発見されるという大ニュース。まずもって気になるのは在来か外来かということですが、石垣島のものは外来と推定されているものの、今回のものについては保留しています。
ただ、石垣島のものとは形態がやや異なるという記述と、本種が国外では中国大陸に広く自然分布するということから、在来の可能性も捨て切れません。ご存知のとおり九州北部は日本でもっとも中国大陸の生物相の影響を受けている地域ですので、在来でいたとしても不思議ではないのです。遺伝的な観点からの精査が期待されます。
著者らも指摘するように、これまでドブガイ類と混同されてきた可能性がありますが、その気になって見れば形態的にはかなり明瞭に日本産既知種と区別できるので、まずは日本各地で採集されたドブガイ類標本の再調査が必要でしょう。国内他地域からの発見も十分にありえると思います。
実はこの論文の産地のドブガイモドキは昨年にさっそく採集に行きまして、標本も手元にあります。言われてみれば、なるほど、確かに、ぜんぜん違う・・。何度も行ったことがある場所ですし、何度も死殻を拾っていたわけですが、これに気が付いていなかったとは相変わらず自らの同定能力の低さに衝撃を受けます。ということでどんな二枚貝なのか、その気になるお姿は・・近々こちらで紹介します。