オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Perdices, A., Bohlen, J., Šlechtová, V., Doadrio, I. (2016) Molecular eidence for multiple origins of the European spined loaches (Teleostei, Cobitidae). PLOS ONE: DOI:10.1371/journal.pone.0144628
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今年の初めに出た論文。紹介しようと思って忘れていました。いわゆるドジョウ-シマドジョウ系の系統をミトコンドリアDNA(cytb)と核DNA(RAG-1)から詳細に調べたという論文です。ミトコンと核で系統関係は大きく変化し、交雑由来の種が多いのでミトコンだけでは真の系統関係が見えない、ということがよくわかります。で、核とミトコンをあわせた解析では、感覚的な形態分類とも比較的よく一致しているように思います。ユーラシアに広く分布する「ドジョウ」たちが、どのような経緯で分布を広げ多様になってきたのかについて、色々と想像が働きます。
で、個人的に興味がある属分類の方について考えてみると、Sabanejewia、Misgurnus、Koreocobitisは非常に良い感じで、形態と系統が一致するように思います。特にMisgurnusはミトコンで見ると大きく二系統にわかれて、一方は完全にシマドジョウ属の遺伝子を持っているのですが、核とあわせてみるとこの2系統のMisgurnusはひとまとまりになり、形態的にはシマドジョウ属と「全く違う」のは明らかなわけで、このあたりの属分類はいまの形が妥当であると言える結果を、この研究は明確に提示していると思います。
ただ、そのCobitisと近縁属のIksookimia、Kichulchoia、Niwaellaの関係については、色々と考え方があるかなというところで、まあ系統関係が形態分類(特に属分類)と完全に一致する必要もないとは思いますが、どういう形に整理するのが適しているのか、色々と想像が働きます。形態的には全部Cobitisというのも一案かな、という感じも。。
それと日本列島のシマドジョウ属の一部はおそらくかなり古いタイプのシマドジョウであることもわかります。日本列島には世界的に貴重なシマドジョウがいくつも分布しているということは、もっと知って欲しいと思います。