オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Chen, Y., He, D., Chen. H., Chen. Y. (2017) Taxonomic study of the genus Niwaella (Cypriniformes: Cobitidae) from East China, with description of four new species. Zoological Systematics, 42: 490-507. (LINK)
中国からNiwaella属(アジメドジョウ属)の4新種(!)が記載された論文です。論文を見てもわかるとおり、それぞれの種は形態は当然のこととして、ミトコンドリアDNAの部分塩基配列でも区別されるものの、系統樹上の位置はばらばらです。世界のシマドジョウ類の系統樹上においても、日本のアジメドジョウは一番外側にくるということはなく、シマドジョウ属の一部に埋没します(特異なのは特異ですが)。かつてNiwaella属とされていた韓国の数種は現在Kichulchoia属に移されていますが、これもミトコンドリアDNA部分塩基配列の特徴からは、朝鮮半島系シマドジョウ類の一群という印象で、シマドジョウ属全体からみると埋没しています。ということでNiwaella属とその関連種はいずれもミトコンでは単系統にはならないということになります。
形態ではまとまり、遺伝子(ミトコン)ではまとまらない、というところになるわけですが、仮説としては2つ成り立ち、(1)何か原種がいて各地に分散後各地のCobitisと交雑してできた群、(2)各地のCobitisが上流環境に適応してたまたまそれぞれ似た形態になった群、のどちらかではないかと、妄想しています。前者であれば属としてまとめても系統と矛盾がありませんが、後者だと系統と属の関係がすっきりしません。系統をすべて分類に反映すべきとは思いませんが、赤の他人を同属にまとめるのもすっきりしない感じはします。今後、核DNA分析などが行われればそのあたりがすっきりするだろうと思います。いわゆる異所的同方向進化のモデルということも考えられるかもしれません。この「ニワエラ系」シマドジョウ類の属分類については、今後まだまだ動きがありそうです。
ところでこの論文に拙著が「Additionally, Nakajima et al. (2013) wrongly recorded this species as Cobitis laterimaculata」として引用されています。ようするにかつて東チャオシー川で記録したC. latermaculataは真のlatermaculataではなく、今回記載された未記載種だったということです。

ということで改めてNiwaella brevipinna Chen & Chen, 2017を。この仲間はいずれも美しい模様を持っていて、素敵です。分類学的な位置づけはともかく、東アジアを代表する素晴らしいドジョウです。