オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Kano, Y., Tabata, R., Nakajima, J., Takada-Endo, M., Zhang, C., Zhao, Y., Yamashita, T., Watanabe, K. (2017) Genetic characteristics and possible introduced origin of the paradise fish Macropodus opercularis in the Ryukyu Archipelago, Japan. Ichthyological Research: online first (LINK)
共著論文です。琉球列島におけるタイワンキンギョの遺伝的な特徴と移入の可能性について、です。琉球列島(沖永良部島沖縄本島久米島南大東島)と台湾、中国南部と分布域広域でのサンプリングを行い、遺伝的特徴を調べました。結論として、古い時代の台湾からの?移入集団の可能性もあるけれども、独自の遺伝的特徴ももっていて、琉球王朝時代からの”闘魚”としての文化的背景、その侵略性の低さや、湿地環境の指標種としての重要性から、現時点では保全対象となりうる集団ではないかという考察を行っています。海外サンプルを増やすのと、解析する遺伝的部位を増やすことをしないと結論はでないかなーと個人的には思っています。

タイワンキンギョはキンギョとはまったく関係なく、いわゆるベタなどに近い淡水魚です。しましまで熱帯魚感あふれていて美しいです。


こちらはサンプリングさせてもらった琉球列島某所での保全池。無加温で熱帯魚が飼育できるという夢のビオトープですが、ここでタイワンキンギョが系統保存されています。このあたりではずっと昔から馴染みのある魚で、圃場整備で次々といなくなり、それは寂しいということで絶滅寸前だった個体を集めて、みんなで増やしているものです。
例えば外来種だったとして、侵略性がないとされる古い外来種、しかも興味深い文化的背景があるものをどう扱うべきか、ということを考える上で面白い事例ではないでしょうか。琉球列島では本種が好むような、浅く植物が豊富な湿地帯は次々と失われていっています。こうした環境は水生昆虫が多い環境であることが多く、非常に危機感を抱いています。タイワンキンギョがかつて記録されていた渡嘉敷島では、今回生息を確認できませんでした。