オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

侵略的な外来種として活躍していたマングースの駆除にほぼ成功した奄美大島において、アマミノクロウサギの個体数が増えているという新聞記事を見ました。

www.asahi.co

実は一昨年、昨年と二年連続で奄美大島に行ったのですが、いずれも2晩ずつというスケジュールの中、二年連続でアマミノクロウサギを見ることができました。増えているというのは本当だろうなと思います。

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これは昨年撮影したものです。普通の山間舗装道路を夜に車で走っていたら路上にいたのですが、こちらに気づくとあわてて斜面を駆け上ろうとして、驚くべきことに脚をすべらせて転んで、最後はこちらにおしりを向けてじっとしていました(写真)。これは高性能外来捕食者にとっては良い餌だろうと思います・・・。

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近くの林道では歩いているアマミヤマシギにも出会いました。この鳥ものんびりと油断しすぎていてやばいです。夜の林道で出会うと驚いて飛び立つのですが、だいたいすぐ先に着陸します。したがって、そのまま歩いていくとその先で同じように立っているアマミヤマシギにまた出会います。するとアマミヤマシギはまた驚いて飛び立つのですが、やっぱりだいたいその少し先の林道上に立っています。野生の鳥類として何か色々と間違っているような気がしてなりません。これらはいずれも、数十万年のスケールで大陸から切り離され、強力な捕食者がいない生態系で進化したことが原因と思われます。すなわち、人為を超越した様々な偶然と奇跡が重なって、これらの生物がこの世にあるというわけです。人為的にこれらの生物を滅ぼすような事態は、なんとしても避けなくてはなりません。

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マングースはほぼ根絶に成功したと言われていますが、次に問題になっている高性能外来捕食者がネコです。これは上の2つの写真を撮った場所からはだいぶ距離のある海岸沿いの道路上にいたネコです。ネコと言っても、飼われている飼い猫、人家回りでうろうろしている野良猫、そして完全に森林内で野生の暮らしをしているノネコ、とおおむね3つのカテゴリーで理解されていますが、このうち奄美大島の貴重な生物に大きな悪影響を与えると考えられているのはノネコです。写真のネコは首輪をしていなかったので飼い猫ではなさそうですが、野良猫かノネコかはわかりませんでした。

ネコは好きな人が多く、行政的にノネコ管理をすることを批判的に見る人は少なくありません。アマミノクロウサギが増えたのだから、ノネコ管理をする必要はないという意見もあるようです。しかしそれは違います。ノネコ管理はアマミノクロウサギ保全するためだけにしているわけではありません。奄美大島の生態系保全をするためにしているのです。それは奄美大島の生態系から得られる利益を持続的に利用することにもつながります。そして世界的に貴重な奄美大島の生態系を損壊せず次世代に引き継ぐことは、たまたま奄美大島をその領土に含んでいる日本国としての義務であるともいえます。ノネコはアマミノクロウサギもアマミトゲネズミもアマミケナガネズミもその他固有の爬虫類も両生類も昆虫類も食べます。したがって、アマミノクロウサギが増えたからノネコ管理をしなくていいという話ではないのです。ノネコは環境省農水省による「生態被害防止外来種リスト」にも掲載されており、国としても侵略性のある外来種として扱っています。かわいそうな野良猫‐ノネコがこれ以上増えないための対策を講じるとともに、いま生態系に悪影響を与えている野良猫‐ノネコについては早急な対策が必要と思われます。