オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Kitano, T., Tahira, Y. Kohno, H.(2019)Discovery of the Family Spercheidae from Japan, with Redescription to Spercheus stangli Schwarz et Barber, 1917 (Coleoptera, Hydrophiloidea).Elytra, New Series, 9: 291-295.

日本産水生甲虫に「科レベル」での新記録種です!驚愕!ということでその名もオニガムシ科コブオニガムシです。東南アジアに広く分布している種ですが、今回日本初記録として西表島からの報告です。

オニガムシ科はガムシ科の一亜科とされることもあるガムシに近縁なグループですが、その見た目はかなり変わっています。泳ぎはあまり巧みではなく、水中の基質上を歩いたりして暮らしているようです。和名で「鬼」をつけた理由として、著者らは頭楯前縁の両端が突出することを鬼の角に見立てて、と説明しています。この和名はわかりやすく、とても良いと思います。この仲間はろ過摂食を行うという報告もあり、この独特の頭楯の形態はそうした生態とも関係しているのかもしれません。

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 そんなコブオニガムシの御姿がこちらになります!ひーカッコいい!実はこの種の発見そのものは2013年で、正式な公表以前に発見者のKITANOさんに無理を言って、ワンペア譲っていただいて撮影したのでした。まだこんなのが国内にいたとは驚きです。しかし産地は限られ、多い種ではないようなので、もし楽園を見つけても乱獲は控えてください。今度1月に発売される「ネイチャーガイド日本の水生昆虫(リンク)」においても、掲載しています!この図鑑は今年11月までに記録された種を掲載という基準ですが、著者がこの虫の発見者でもあるということで当初から掲載予定で進めていたものです。論文も間に合って良かったです。

ところで、かつて西表島と言えば、水生昆虫の楽園として名をはせていたわけですが、実はこの10年ほど急速に湿地帯環境の悪化が進展しており、絶滅したと考えられる種もでてきている状況です。そんな中、本種の生息が確認できたというのは喜ばしい限りですが、しかしその一方で先行きも不透明と言わざるを得ません。貴重な生物の生息環境として重要な西表島。本気でその生物多様性保全しようと言うのなら、積極的な湿地帯再生は必要不可欠です。小さな湿地ビオトープでも構いません。予算や人手に限りがあるということは重々承知していますが、西表島生物多様性は人類共有の財産です。国策として、少しでも湿地帯再生を進めていってほしいです。少しでも湿地帯をつくることに意味はあります。西表島の湿地帯生物は本当に、危機的な状況です。小さな湿地帯の水生昆虫たち。それらはすべてイリオモテヤマネコカンムリワシにも繋がっています。