オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Komiya, T., Fujita, S., Watanabe, K. (2011) A novel resource polymorphism in fish, driven by differential bottom environments: an example from an ancient lake in Japan. PLoS ONE, 6 (2): e17430. doi:10.1371/journal.pone.0017430.
学会発表などでその結果の一端を拝見しており、出版されるのを楽しみにしていた論文がついに出ました!琵琶湖産ヒガイ類の形態差が引き起こされる仕組みに迫った論文です。この論文で訴えたい主題はもちろん論文タイトルにあるとおりで学術的にはもちろん面白いのですが、コイ科魚類愛好家にとっても色々と感慨深い内容ではないでしょうか。オープンアクセス誌なので誰でも見ることできるようです→リンク
琵琶湖にはご存知のとおりカワヒガイの亜種とされるビワヒガイと固有種とされるアブラヒガイが生息しています。さらに詳しい方だと、琵琶湖のヒガイがかつてはトウマル、ツラナガ、アブラヒガイの3型に、もしくはトウマル、ツラナガ、ヒガイ、アブラヒガイ、カマドヒガイの5型に区別されていたことなどもご存知かもしれません。「日本のコイ科魚類」という凄まじい本を執筆した中村守純博士もこの違いについてはかなり詳細に触れているものの、この形態的差異が種を分かつものなのか、生態的な違いであるのかについては結論を保留しています。
この論文ではそういう背景のものと、遺伝的な観点、形態的な観点、そして食性の観点から詳細に調査分析を行い、生息する底質環境の違いが食性や習性の違いを引き起こし、さらには形態的な差異を引き起こしているであろうことを鮮やかに指摘しています。すなわち、長年の課題であった琵琶湖内のヒガイ各型は、現在のところすべて同一種内の変異であることがわかったということになります。底質環境が違うというだけで別種と見紛うほどに形態が変化してしまうというのは驚きです。こういうことが積み重なって、やがて別種となったりするのでしょう。
この論文は第一弾にすぎず、まだまだ続きがあると思われますので続編が楽しみです。重厚なデータに基づいた迫力ある考察は圧巻です。

ちなみにヒガイとはこんな魚。これは福岡県産のカワヒガイではなさそうなヒガイ。ビワヒガイ?でも形だけでは判断が・・