オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Tang, K.L., Agnew, M.K., Chen, W.J., Hirt, M.V., Raley, M.E, Sado, T., Schneider, L.M., Yang, L., Bart, H.L., He, S., Liu, H., Miya, M., Saitoh, K., Simons, A.M., Wood, R.M., Mayden, R.L. (2011) Phylogeny of the gudgeons (Teleostei: Cyprinidae: Gobioninae). Molecular Phylogenetics and Evolution, 61: 103-124.
昨年に出ていたものですが紹介。全世界のカマツカファン待望の論文です。タイトルもかっこよく決まっており、執筆者もこれしかないという決定版的な作品となっております。論文の本筋はまあ色々ありますが、カマツカファンの興味はあの多様なカマツカ亜科の系統関係はどのようなものなのだろうか、というところにあるでしょう。
この論文では世界のカマツカ亜科が、主に3群、Hemiburbus-Squalidus group、Tribe Sarcocheilichthyini、Tribe Gobioniniに大別できることを明らかにしています。日本語的に言えば、ニゴイ-スゴモロコ群、ヒガイ族、カマツカ族という感じでしょうか。ニゴイ-スゴモロコ群に含まれる属はHemiburus(ニゴイ属)、Squalidus(スゴモロコ属)、ヒガイ族に含まれる属はCoreius、Ladislavia、Rhinogobio、Coreoleuciscus、Gnathopogon(タモロコ属)、Gobiocypris、Paracanthobrama、Pseudorasbora(モツゴ属)、Pseudopungtungia、Pungtungia(ムギツク属)、Sarcocheilichthys(ヒガイ属)、そしてカマツカ族に含まれる属はRomanogobio、Gobio、Xenophysogobio、Gobiobotia、Pseudogobio(カマツカ属)、Saurogobio、Abbottina(ツチフキ属)、Platysmacheilus、Microphysogobio、Biwia(ゼゼラ属)、Huigobioとなっています。
属名になじみ深いのが並んでいるのを見てもわかるように、東アジア地域はカマツカ亜科の多様性がとても高い地域で、日本にも多くの種が自然分布しています。見た目は似ていないですし、生活史もぜんぜん違いますが、ニゴイもスゴモロコもヒガイもモツゴもムギツクもタモロコもカマツカもツチフキもゼゼラもすべて同じ出自とは驚きです。これらがいかなるシステムによって進化してきたのか?個人的には記載的な生活史研究から得られる情報を肉付けしていくことで、その一端が明らかになり、興味深いストーリーが描けるのではないかと考えています。