オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Nishikawa, K., Matsui, M. 2014. Three new species of the salamander genus Hynobius (Amphibia, Urodela, Hynobiidae) from Kyushu, Japan. Zootaxa, 3852: 203-226.
久しぶりに論文紹介。九州産の流水性サンショウウオが3種、新種として記載されました。これで九州のサンショウウオの分類はすべて解決したということになるでしょうか。素晴らしいです。気になるその3新種ですがいわゆる”九州のオオダイガハラサンショウウオ”と呼ばれていた方々について形態と遺伝子の観点から詳細な検討を行い、祖母傾山系のものをソボサンショウウオH. shinichisatoi、天草のものをアマクササンショウウオH. amakusaensis、そして大隅半島のものをオオスミサンショウウオH. osumiensisとしそれぞれ新種として記載したものです。これにより九州の流水性サンショウウオは以下の6種として整理されました。
ブチサンショウウオHynobius naevius
コガタブチサンショウウオHynobius yatsui
ベッコウサンショウウオHynobius stejnegeri
ソボサンショウウオHynobius shinichisatoi
アマクササンショウウオHynobius amakusaensis
オオスミサンショウウオHynobius osumiensis
論文中ではオオダイガハラサンショウウオ種群の分子系統樹が掲載されていますが、これを見ると遺伝的にベッコウ、アマクサ、オオスミ、ソボがまとまっており、一方でコガタブチ、ブチ、アカイシ、イシズチがまとまっています。これは九州の地史を考える上で興味深いです。淡水魚類でもヒメドロムシでも北部と南部でファウナが異なるのですが、これら流水サンショウウオも南部種群と北部種群は少々縁が遠いようです。ブチやコガタブチに近縁なのは九州南部の各種よりもアカイシやイシズチであること、そして本家オオダイガハラはヒダサンショウウオと近縁で、九州に分布する流水性サンショウウオとはずいぶん昔に分化したようであることなど、色々と妄想の膨らむ論文です。

ということで以前に大隅半島で見つけたオオスミサンショウウオの幼生の画像など。ヒメドロ探し中にたまたま見つけて大喜びしたのを覚えています。生体もかっこよさそうなので一度見てみたいものです。