オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

高橋弘明(2015)高知県におけるシマドジョウ属2種の分布・生息状況および形態的特徴.日本生物地理学会会報,70:73-86.
高知県内にはオオシマドジョウ、トサシマドジョウ、ヒナイシドジョウの3種のシマドジョウ属が分布していますが、そのうちオオシマとトサシマの分布様式・形態の違いを詳細に調べた論文が出版されました。ずらりと並んだ水系ごとのプレート写真が圧巻で、素晴らしい内容です。
2種いずれもかつての状況から確実に生息地を減らしているようで、危機的な状況が浮かび上がります。またオオシマとトサシマは骨質盤の形態や尾鰭付け根の黒斑の特徴によって、明確に形態的に区別できることや、トサシマドジョウの骨質盤には2型あることなど、非常に重要な発見が報告されています。
骨質盤が幅狭いことで定義されるシマドジョウ=Cobitis biwaeには遺伝的・形態的に区別される少なくとも4種が含まれていることが明らかにされていますが、いわゆるC. biwaeがどの種に該当するのかはまだ決定していません。このような研究が積み重なることにより、真のbiwaeが確定し残りの3種に正式な学名が付される日が楽しみです。また、生息状況は危機的ですので、学名はなるべく早くついて欲しいものです。

水系ごとの模様を並べている関係上、水系名は当然付されています。ただしトサシマドジョウは高知県の希少種保護条例により採集や飼育、売買が禁止されているので、生息水系が公にされても乱獲の恐れはありません。希少種を対象にこういう研究ができるのも条例により保護されているからで、一般的に採集禁止は良くないと思っていますが、こういう場合は安心できて良いなあとも思います。ちょっと複雑な心境ですが。。