オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

堺 淳・森口 一・鳥羽通久(2002)フィールドワーカーのための毒蛇咬症ガイド.爬虫両棲類学会報,2002:75-92.(PDF
野外シーズンまっさかり。梅雨があければもう野外で生き物三昧という方も多いかと思いますが、ここで一度基本に立ち返り、毒生物のお勉強などいかがでしょう。湿地帯でしばしば見かける毒生物といえば、マムシとヤマカガシ。ということで毒蛇咬症を解説した論文を紹介します。非常に網羅的かつ根拠もしっかりした内容で、読んだだけで勉強になります。生態や形態を熟知し、まずは咬まれないための努力を惜しまないことが非常に重要です。また、不幸にも咬まれてしまった場合には、何という種に咬まれたのか?という点がその後の迅速かつ効果的な治療に必要不可欠であることがわかります。同じ「ヘビ」であっても毒の種類はヘビの種類によって様々、治療法も様々なわけです。したがって日頃から図鑑などを読んで、その生態を熟知すると同時に、正確な同定ができるよう勉強しておくことは、いざというときに命を救うかもしれません。
この論文の表2に有毒生物の死亡者数がまとめられています。これを見ると意外にもハブよりもマムシのほうが死者数が多いことがわかります。これは分布域の広さからくる人との出会い頻度の多さと関係しているのでしょう。身近なヘビで基本的に大人しく、不必要に恐れる必要はありませんが、十分に注意をすべき野生生物であることを再認識したいものです。
ちなみにこの表をみると、やはり一番恐ろしい毒生物はハチ類であることがわかります。圧倒的な死者数です。都市にも普通にいますし、オオスズメバチなどは十分に注意する必要があるでしょう。自分も野外で一番おびえているのは、オオスズメバチです。
近年ニュースなどになっているクマですが、環境省クマ類出没対応マニュアル(PDF)に1980年〜2006年の死者数のグラフが出ていました(14ページ、図1-12)。これをみると年間死者数は多くて5名程度となっています。ただ負傷者数は年によっては100人をこえているので、これもまた注意すべき野生生物ではあるでしょう(残念ながら九州では絶滅しましたが)。
ということで安全で楽しい野外活動を行うために必要なのは、何はともあれ「知識」です。知識を得る努力は惜しまず、また生物を見分ける能力は常に磨いておくことが、自分や身の回りの人たちを助けることになるでしょう。まずは惜しまず図鑑を買って勉強しましょう。