オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Minoshima, Y.N. (2016) Taxonomic review of Agraphydrus from Japan (Coleoptera: Hydrophilidae: Acidocerinae). Entomological Science, 19: 351–366.(DOI: 10.1111/ens.12213) (リンク
北九州市立自然史・歴史博物館の蓑島悠介博士による日本産ツヤヒラタガムシのリビジョンです。この論文中で、日本産水生ガムシに新たな一種が加わりました。その名もオガタツヤヒラタガムシAgraphydrus ogatai Minoshima, 2016です。
本論文では同属既知種のツヤヒラタガムシA. narusei、ウスイロツヤヒラタガムシA. ishiharai、オオツヤヒラタガムシA. luteilateralisリュウキュウツヤヒラタガムシA. ryukyuensisについても詳細な形態データが新たに公表されています。各種について拾っている分布情報も大変膨大なため、今後の各地での調査の励みにもなるでしょう。なお、今回新種として記載されたオガタツヤヒラタガムシの模式産地は福岡県で、東海地方以西の本州、四国、九州、隠岐島種子島からみつかっています。
ツヤヒラタガムシ属はいずれも流水性で、体長2ミリほどの小さな水生甲虫です。オオツヤヒラタは主に水がしたたる岩盤上を、他の種は主に川岸の礫の間隙というマニアックな場所を主な生息場としています。とても小さく見た目も地味でおよそ人様の(金銭的な)役にはたちませんが、上流と下流で同属で棲み分けていたり、生息場の利用の仕方も特殊だったりと、非常に興味深い水生生物です。今回の論文をきっかけに各地で調査が進み、生態に関する新知見やさらなる未知種の発見なども、期待したいところです。また河川環境の指標としても面白い立場だと個人的に考えています。

ということで画像は今回新種記載されたオガタツヤヒラタガムシ(福岡県産)です。
ところでこの「オガタ」とは私にヒメドロムシのことを教えてくれたO師匠のことです。この種ははじめにO師匠がその存在に気づいたもので、私もヒメドロ採集中に採らせてもらいました。おそらくそれと認識して採集したのは師匠に次いで私が世界で二番目であったと思われます。O師匠は数年前に病気で亡くなられました。この種については生前ずっと気にかけておられたので、こうして世に出たことが、またO師匠の名前がついたことが、本当にうれしいです。師匠がご存命であったらどれほど喜ばれたか。。色々なことを思い出してしまいました。