オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

希少種条例

2021年5月1日付で福岡県でも正式に希少野生動植物の保護に関する条例の指定種が決定しました↓

www.pref.fukuoka.lg.jp

詳細は上にある通りですが、以下の20種となります。これらについては採集、所持、売買が基本的に禁止されます。違反すると罰則もある厳しいものとなっています。

植物

1 ミスミソウ

2 キビヒトリシズカ

3 ヤシャビシャク

4 ミズスギナ

5 サワトラノオ

6 サギソウ

7 トキソウ

8 オキナグサ

9 ムラサキ

10 ウスギワニグチソウ

動物

11 ヨシゴイ

12 コアジサシ

13 セボシタビラ

14 ハカタスジシマドジョウ

15 コバンムシ

16 カワラハンミョウ

17 ミヤザキムシオイ

18 ヤマボタル

19 オバエボシガイ

20 カタハガイ

 

罰則規定付きの希少種の保全に関する法令としては、国の「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律種の保存法)」(リンク)がもっとも基盤となるものですが、それ以外に各都道府県や市町村レベルでも独自に条例を作成し、種指定をしているところが増えてきています。したがって、趣味の採集や仕事としての調査・研究をする際には、条例に違反しないよう事前に調べるなど注意が必要です。また、これらの条例では追加指定も可能な形になっているので、常に最新の指定種の情報をチェックしておく必要もあるでしょう。

実は九州・沖縄地区では県別の希少種条例の制定は福岡県がもっとも最後となります。九州・沖縄地区の希少種条例を年代順に並べておきます。

 

佐賀県佐賀県環境の保全と創造に関する条例(2002年)」(リンク

鹿児島県「鹿児島県希少野生動植物の保護に関する条例(2003年)」(リンク

熊本県熊本県野生動植物の多様性の保全に関する条例(2004年)」(リンク

宮崎県「宮崎県野生動植物の保護に関する条例(2006年)」(リンク

大分県大分県希少野生動植物の保護に関する条例(2006年)」(リンク

長崎県長崎県未来につながる環境を守り育てる条例(2008年)」(リンク

沖縄県沖縄県希少野生動植物保護条例(2019年)」(リンク

福岡県「福岡県希少野生動植物種の保護に関する条例(2021年)」(リンク

 

さて、種の保存法もそうですが、これらの希少種保護のための条例は、希少種が絶滅しないように制定されているものです。しかしながら種の保存法もそうですが、いずれも生息地の開発を制限する部分は非常に弱いという共通の欠点があります。これは個人のすでにある財産を可能な限り侵害しないようにという基本方針があるためです。そのため、採集禁止や売買禁止などの方面が強化された形が基本となっています。そして、そのために指定されながらその生息地が破壊されてしまう、あるいは直接破壊されないまでも周辺域の開発により結果的に絶滅してしまう、という例もかつてはしばしばありました。

昨今では生物多様性保全に関する意識も高まり、さすがに何の協議もなしに指定種の生息地が破壊される事態は少なくなりつつあります。特に公共事業においては、これらの条例を根拠にして、特別に予算を組んで保全が可能になることも少なくありません。条例は保全のための「道具」です。行政側が用意した道具を、我々がどのようにして活用していくのか、そこが重要な視点です。なんとかうまく活用して、指定して終わりではなく、生息地が増えて絶滅の危機を回避して指定を解除する、という方向に進まなくてはいけません。そしてそうなるよう、我々は注視し、時にきちんと意見をしていく必要があります。

ところで福岡県の条例では二つ、他県にはあまりみられない特徴があります。一つは種の保存法指定種との二重指定を可能にしていることです。今回の指定種の中では、魚類のハカタスジシマドジョウとセボシタビラがそれにあたります。実はかつてとある県において条例指定のとある水生昆虫がおり、それは県予算で保全や調査がきちんとなされていたのですが、その後に国の指定種になったために県条例指定種から外れて県が調査をしなくなり、とはいえ国もすぐには予算をつけずに調査ができず、知らないうちに絶滅していた、という事例がありました。本当に本末転倒な悲しい出来事でした。二重指定はどちらも責任をもつ、ということでもあるので、そういう悲しい事態を防ぐことができると期待しています。

もう一つは第5章にある「外来種に関する施策」です。ここに罰則がないのは残念ですが、「侵略的外来種の個体をみだりに放ち、若しくは植栽し、又はその種子をまく」などの行為の禁止が明記されています。福岡県ではすでに侵略的外来種リストを作成・公開しています(リンク)。ここで侵略性があると判定されている外来種を野外に放つことは、本条例に違反するものとして扱うことができます。

ということで繰り返しになりますが、希少種条例は指定して終わりではありません。生息地が増えて絶滅の危機を回避して指定を解除する、という方向に進まなくてはいけません。法令の細かいところだって変えていくことができます。ぜひともその状況を注視して、批判と応援をしてもらえればと思っています。そして自分も、その手の届く範囲、職務のギリギリまでがんばって保全に尽力したいと思います。