オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

毎月一つは何かと思っていたのについに8月は書き損ねてしまいました。すみません。ということで2か月ぶりとなります。今年は分担執筆の本が3冊出ます(出ました)。どれも良い本と思いますので紹介しておきます。

 

(1)小学館の図鑑NEO メダカ・金魚・熱帯魚

www.shogakukan.co.jp子供向け図鑑の小学館NEOシリーズは私も色々とお世話になった素晴らしい図鑑シリーズなのですが、新刊に関わらせてもらいました。「観賞魚」という枠組みでまとめた内容で、メダカ・金魚・ベタなど改良品種中心の人気種から、一般的な観賞用熱帯魚が網羅されて紹介されています。私はこのうち、コイ目を担当しました。執筆者はいずれもそれぞれの分類群で専門的な研究をされている方々で、情報は濃密かつ最新と思います。個人的に最新の鑑賞メダカ事情・品種はあまり知識がなかったので、読んでて面白かったです。あと各コラムも最近の話題が中心で勉強になります。私もがんばって担当のコイ目について最新情報、色々と文献を集めて書きました。編集はさすがの高クオリティで、デザインも見やすく、安心して読むことができます。一家に一冊ぜひどうぞ。

 

(2)琵琶湖の魚類図鑑 

www.sunrise-pub.co.jp一転してこちらの図鑑は専門的かつマニアックな内容です。琵琶湖流域の魚類を中心に、甲殻類や貝類なども紹介した図鑑で、私はこのうちドジョウ科の一部を担当しました。琵琶湖の図鑑と言えば名著「湖国びわ湖の魚たち」が有名です。私も幼少時に当時の滋賀県琵琶湖文化館を訪れた際に購入し、愛読していました。今回の編者は滋賀県立琵琶湖博物館のお三方で、つまりこれは「湖国びわ湖の魚たち」の流れをくむ正統な後継図鑑ということになります。ということで本書の情報は最新の研究成果に基づいており、加えて各担当者がかなり自由に(好き勝手に)書いていて、個性が出ていて面白いです。何より情報量が多く、もちろん超絶勉強になります。一家に一冊・・かどうかは不明ですが、湿地帯生物愛好家はぜひとも手元に置いて欲しいです。

 

(3)水田環境の保全と再生ー応用生態工学会テキストー 

gihodobooks.sslserve.jpこちらは完全な専門書。コラム2つと保全事例1つを担当しました。水田環境は二次的な自然環境として生物多様性保全上重要な環境ですが、農業をとりまく背景の変化・近代化に伴い、生物の生息場としての状況は非常に悪化しています。ゲンゴロウタガメ、メダカ、ドジョウ、トノサマガエル、マルタニシなどかつての水田の普通種たちがいずれも各地で絶滅危惧種になっていることは、この状況を裏付けます。水田は農業の場であるのは当然として、同時に、生物多様性、気候調整、治水、景観、文化など様々な機能を担ってきました。これを多面的機能と言うのですが、個々の農家に負担を押し付けるばかりで、あらゆる多面的機能が下がっています。この損失は社会が受けるものですから、社会全体としてその「恵み」を維持し支える枠組みが必要です。なんとかしなくては、というあたりに興味がある方にはお勧めの内容で、そもそも生物の生息場としての水田とは何なのか、という部分から実際の保全事例まで、段階的に教科書的に学べます。

 

ということで以上3冊、興味のあるものがありましたら、ぜひに。

分担執筆というのは主著あるいは編者として関わるものよりも気楽ではありますが、分担分を専門家として任されているという責任はありますので、その精査・執筆は実はけっこう大変です。いずれもずいぶん時間をかけて、責任もって書かせてもらいました。もし間違っている内容がありましたらそれはすべて執筆者の私の責任。気づいた点がありましたらぜひご指摘ください。よろしくお願いします。