オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Yanagi, T., Nomura, S. (2021) A new species of the subterranean diving beetle genus Morimotoa (Coleoptera, Dytiscidae) from Tokushima Prefecture, Japan. Elytra, Tokyo, New Series, 11 (Supplement): 87–93. 

日本産ゲンゴロウ科が一種増えました!新種・アワメクラゲンゴロウ Morimotoa uenoi Yanagi & Nomura, 2021です。

模式産地は徳島県阿波市。種小名は日本の地下水性昆虫の研究を大きく進めた故・上野俊一博士に献名されたものです。本種は真地下水性種で、複眼も退化しているすごいゲンゴロウです。本論文では同時にメクラゲンゴロウの亜種として記載されていたミウラメクラゲンゴロウを種に昇格する分類学的な処置を行っています。

ということで著者のYANAGIさんから写真を提供いただきました。どうもありがとうございます!ここにその御姿を紹介します!

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日本産メクラゲンゴロウ属はこれで5種となりました。以下メモしておきます。

メクラゲンゴロウ Morimotoa phreatica S.Uéno, 1957 分布:本州(兵庫県)    
ミウラメクラゲンゴロウ Morimotoa miurai S.Uéno, 1957 分布:本州(京都府兵庫県
アワメクラゲンゴロウ Morimotoa uenoi Yanagi & Nomura, 2021 分布:四国(徳島県
トサメクラゲンゴロウ Morimotoa morimotoi S.Uéno, 1996 分布:四国(高知県)    
オオメクラゲンゴロウ Morimotoa gigantea S.Uéno, 1996 分布:四国(高知県

 

記載者名を見るとわかる通り、今回新種記載されたアワメクラゲンゴロウ以外はすべて上野俊一博士が記載したものとなります。いずれも真地下水性種で、井戸などから得られているものの、普通に出会うことはまずないでしょう。どの種も分布域は狭く、採集はとても難しいです。私もこの仲間は採ったことがありません。いつか採ってみたいものです。このうちオオメクラゲンゴロウは1956年に採集された模式標本となった1個体しか得られていないとか。まさに幻の水生昆虫と言えましょう。

日本国内の地下水性の湿地帯生物の実態は把握されているとは言い難い状況が続いています。陸上の湿地帯の荒廃が進んでいる中、実態解明が遅れている地下水性種の生息状況はいずれも心配です。何をするにもまずは分類学から。こうした研究のさらなる進展が望まれます。