オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

2022年の福岡県ではアンピンチビゲンゴロウの採集・観察例が相次ぎました。この中には私が10年以上にわたり毎年1回は調査をしている池や、4年以上詳細な調査を行っている池が含まれており、今年になってから大発生しているのは確実です。

アンピンチビゲンゴロウの標準的な模様の個体。

アンピンチビゲンゴロウのやや変わった模様の個体。

本種は神谷(1938)によりアンピンチビゲンゴロウBidessus antennatusとして当時日本領となっていた台湾から記録された種です。したがって、アンピンは台湾の地名「安平」に由来します。なお、本種の学名は現在はHydroglyphus flammulatusになっています。

日本国内からは上手ほか(2003)によって石垣島西表島与那国島から初めて記録されました。その後は長らく新しい記録はなかったのですが、2010年代になって突如本土で発見され始め、現在のところ長崎県、福岡県、山口県島根県愛媛県から記録されています。このうち福岡県の記録は2013年が初かつ唯一のものでした(井上ほか,2013)。それが突然、2022年になって、県内各地で同時多発的に発生したということになります。本種は中国中南部から南アジアにかけて広く分布する「南方系」の種であることから、おそらく低温には弱いものと推察されます。したがって、人為的な気候変動の影響で越冬に成功する個体が増え、急激に増加したという可能性も考えられます。今後さらに増えていくのか、今年だけのことなのか、その動向に要注目です。