オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

今日の魚「コイCyprinus carpio」


ということで九州の汽水・淡水魚図鑑はいよいよコイ目に突入。コイ目はいわずと知れた東アジア純淡水域の覇者で、日本でも純淡水魚類の最大手であります。コイ目コイ科コイ属に属するコイは一応現在の分類体系ではユーラシア大陸に広く分布する、まさにコイ目を代表するスーパースター。記載もあのリンネが行っております。ただしもともと形態には様々な地域変異のあることが知られており、遺伝学的な研究が進むにつれて分類学的にも動く可能性があるでしょう。日本でも最近になって、在来種と思われる特有の遺伝的集団があの琵琶湖から発見されております。この琵琶湖の在来コイは形態的にもかなり体高が低く独特の雰囲気を持つコイです。ちなみに遺伝的な変異に関する論文はコチラ→ 
Mabuchi, K., Senou, H., Suzuki, T., Nishida, M. (2005) Discovery of an ancient lineage of Cyprinus carpio from Lake Biwa, central Japan, based on mtDNA sequence data, with reference to possible multiple origins of koi. Journal of Fish Biology, 66:1516-1528.
九州でも広くみられるコイですが、これまでのところ琵琶湖の野生コイのようなスレンダーなコイは見たことがありません。コイ自体はかなりの大型種であることから、おそらくもともとは大規模な水系にのみ生息していた魚であることが考えられます。したがって、九州でも大河川には在来のコイがいるのではないでしょうか。残念ながら、いま九州の普段目につきやすい場所で見られるコイの大部分は放流された養殖コイ、日本の在来種ではない外来種としてのコイです。コイは日本人に大変愛されていて、各地で積極的な放流が比較的好意的にみられています。しかしながら、もともとコイがいないような小規模な水域に放流した場合の環境への悪影響は相当なもので、IUCNの世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれています(ttp://www.iucn.jp/protection/species/worst100.html)。すなわち、「もともとコイが住んでいない溜池や小さな川の生態系にとっては」、放流されたコイは悪以外の何物でもありません。
とまあ、若干暗い話題になりましたが、それほど日本で愛される理由の一つは粗悪な餌と悪い水でも病気にならず、大型になることで、食料としての重要性、貢献度は忘れてはならないでしょう。やや独特の風味がありますが、個人的にはきちんと料理したコイコクやアライ+酢味噌はかなり好きです。

幼魚。尾びれの下が赤い・・。養殖コイの末裔とみた。