オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

コガシラミズムシのレビューが出ていました。本日ちょっとO師匠の職場に行ってきたのですがその際に教えていただきました。どうもありがとうございました。

Vondel, B.J., Holmen, M., Retrov, N. (2006) Review of the Palaearctic and Oriental species of the genus Haliplus s. str. (Coleoptera: Haliplidae: Haliplus) with discriptions of the three new species. Tijdschrift voor Entomologie, 149: 227-273.

実はこっそりと大混乱な日本のヒメコガシラミズムシ属ですがこの論文では日本の数種も扱っています。日本に関係する重要な点としては、いわゆるチビコガシラミズムシHaliplus minutus TAKIZAWA, 1931をH. simplex CLARK, 1863のシノニムにしている点と、H. kamiyai NAKANE, 1963を有効種としている点です。コガシラミズムシに興味ある方々にはご存知のとおり、日本では学名と和名の対応やそもそもどれがどの種なのかについてかなり混乱があります。ヒメコガシラミズムシ属について日本で全貌をまとめて述べているのは佐藤(1984)と中根(1985)でしょうか。キイロコガシラH. eximius、ヒメコガシラH. ovalis、マダラコガシラH. sharpi、コウトウコガシラH. kotoshonisについては一致しているようですが、その他の日本産種については
佐藤(1984)は以下の2種
 クビボソコガシラ H.japonicus
 チビコガシラ H. minutus
中根(1985)は以下の5種
 クビボソコガシラ H. kamiyai
 チビコガシラ H. japonicus
 エゾチビコガシラ H. minutus
 マルコガシラ H. brevior
 クロホシコガシラ H. basinotatus
を認めています。
Vondelの関わった一連の論文(1995,2005,2006)ではH. breviorH. japonicusの、H. minutusH. simplexのシノニムとしており、H. kamiyaiH. basinotatusを認めています。
ということで日本本土のヒメコガシラミズムシ属として最新の知見をまとめつつ、和名と実体との関係や和名の安定性などを考慮すると、キイロコガシラH. eximius、ヒメコガシラH. ovalis、マダラコガシラH. sharpi、コウトウコガシラH. kotoshonis、に加えてクビボソコガシラH.japonicus、カミヤコガシラH. kamiyai、チビコガシラH. simplex、クロホシコガシラH. basinotatusというとこが妥当でしょうか。H. simplexにはすでにチョウセンコガシラミズムシという和名もあるようですが・・うぅむややこしい。。

9月に北海道で採集したたぶんチビコガシラミズムシH. simplex(詳しく調べてません)。学名和名の混乱はさておき、コガシラミズムシ科の造型は大変に特異で美しいものです。