オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

中国の淡水魚その7

そのあまりのカッコよさから世界中に愛好家のいるドジョウ類です。いわゆるドジョウ科には4ないしは5のグループがあるということになっていまして、それぞれが亜科か科かというところは議論の対象になっているようです。最近になって出ているコイ目やドジョウ類の分子系統の論文を見る限りでは、全部ドジョウ科で良いのではないかと個人的には思っています。

Niwaella laterimaculata。上流〜中流に局地的に生息。最近になってNiwaella属であるという論文が出ていましたので、とりあえずこちらの学名で紹介します。日本のアジメドジョウは系統的にはかなり特殊なので、本当にNiwaellaかどうかは遺伝子見たらはっきりするのではないでしょうか。パッとみた印象はNiwaellaというよりは、渓流に特化したCobitisに見えました。

Misgurnus anguillicaudatus。ドジョウにも何系統かあるようですが、とりあえずドジョウです。河川敷の水溜りにて採集しました。

Leptobotia tchangi日本のアユモドキと同属です。こういうドジョウが採れると燃えます。今回採集できたのは1地点のみで生息地はかなり局地的な印象でした。
<1月11日追記>日本のアユモドキについては、分子系統からLeptobotiaではないようだ、という論文が最近出ていました(Watanabe et al., 2009)。分類学的な処置にも色々問題があるみたいです(岩田,2009)。ご教示いただいたTommyさん、ありがとうございました。
<さらに追記>すでにParabotiaに変更するという論文が出ていたようです。ご教示いただいたSZ1さん、ありがとうございました。

Vanmanenia stenosoma。憧れのタニノボリ。こういうドジョウが採れると萌えます。中流域の瀬に生息しており、個体数も多かったです。

Vanmanenia pingchowensis??文献ではこの種に該当するものの、模様の特徴など若干異なります。ドジョウ類ということを考えれば模様の変異も地域によりかなりあるようにも思いますのでなんとも言えません。前種よりも上流に生息していました。
今回の調査で採れたのは以上です。肝心のシマドジョウ属Cobitisが採れていない(涙)のですが、自分が行けなかった10月の調査ではCobitisも採れていたのでついでにそれも紹介します。

大混乱のCobitisなので同定は不可能に近いです。骨質盤の形状は尖っているタイプですのでKim et al. (1999)に従えばCobitis sinensisとなります。はてさて・・。

こちらも不明。これはCobitis dolichorhynchusという種類かもしれません。前種とは同じ川で採れていますが、骨質盤は丸く明らかに別種です。
以上です。シマドジョウ類についてはSZW氏に多くご教示いただきました。どうもありがとうございました。
次回はナマズ類です。

参考文献
Chen, YF., Chen, YX. (2005) Revision of the genus Niwaella in China (Pisces, Cobititae), with description of two new species. Journal of Natural History, 39: 1641-1651.

Kim, IS., Park, JY., Nalbant, TT. (1999) The far-east species of the genus Cobitis with the description of three new taxa (Pisces: Ostariophysi: Cobitidae). Travaux du Muséum National d'Histoire Naturelle "Grigore Antipa", 41: 373-391.

Tang, Q., Liu, H., Mayden, R., Xiong, B. (2006) Comparison of evolutionary rates in the mitochondrial DNA cytochrome b gene and control region and their implications for phylogeny of the Cobitoidea (Teleostei: Cypriniformes). Molecular Phylogenetics and Evolution, 39:347-357.

Son, YM., He, SP. (2001) Transfer of Cobitis laterimaculata to the genus Niwaella (Cobitidae). Korean Journal of Ichthyology, 13: 1-5.

Son, YM., Kim, IS. (2002) Study on the specimens of Cobitis sinensis of the Museum National d'histoire Naturalle (MNHN), France. Korean Journal of Ichthyology, 14: 240-244. (in Korean with English abstract)

Yue, PQ. (2000) Fauna Sinica Osteichthys Cypriniformes III. Science Press, Beijing, China. 661pp. (in Chinese with English abstract)

追記
岩田明久(2009)アユモドキ、学名の歴史・和名の歴史.魚類自然史研究会会誌ボテジャコ,14:19-25.
Watanabe, K., Abe, T., Iwata, A. (2009) Phylogenetic position and generic status of the Japanese botiid loach. Ichthyological Research, 56: 421-425.
<さらに追記
Nalbant, TT.(2004) Hymenphysa, Hymenophysa, Syncrossus, Chromobotia and other problems in the systematics of Botiidae, a reply to Maurice Kottelat. Travaux du Museum d'Histoire Naturelle "Grigore Antipa", 47: 269-277.