オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Sekiya, K., Miura, I., Ogata, M. (2012)A new frog species of the genus Rugosa from Sado Island, Japan(Anura, Ranidae). Zootaxa, 3575: 49-62.
以前から知られていた佐渡島のツチガエル近似種が新種サドガエルRugosa susurraとして記載されました。そうです、あの黄色い腹のツチガエルです。おめでたい。21世紀までこんな特徴的な新種が眠っていたとは驚きです。記載も大変丁寧で、成体の形態はもちろんのこと、遺伝子、染色体、オタマジャクシの形態からスペクトルグラムまで!情報量がすごくて、その辺も勉強になります。しかし、カエル界はここまでしないと記載できないのか・・。まさに一見さんお断りの雰囲気を感じます。論文はなんとフリーダウンロードできるので、興味のある方は実際に読んでみることをお勧めします(リンク※PDF直です)。論文中でも触れられていますが、佐渡島には「普通のツチガエル」も生息しており、この2種が狭い島でどのように共存しているのかは、興味深いところ。それから佐渡島以外の国内の「ツチガエル」にも遺伝的には複数集団が存在するようですが、これらがそれぞれ別種とできるものなのかどうかも気になります。
ところで、このサドガエル氏は名前のとおり佐渡島特産種。世界中で佐渡島にしかいません。佐渡島と言えばトキですが、幸いなことにトキのために色々と湿地帯を整備した結果、このカエルの生息状況も好転しているようです。シンボルとしてトキを持ってきたことの意義がどこにあったのか、よくわかる事例ではないでしょうか。海外産トキの放鳥プロジェクトということで、生物愛好家の中からも若干の批判の声があったようですが、トキのおかげでサドガエルをはじめとする多くの在来の湿地帯生物が救われたことも、広く知ってほしいと思います。トキとともに、この素晴らしいサドガエルがいつまでも佐渡島で生きていくことを願っています。