オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Yasunaga, T., Asanabe, H., Hirano, A., Momosaka, H., Nagashima, T., Hayashi, M. (2018) A unique new species of halophilous water strider of the genus Aquarius Schellenberg (Hemiptera: Gerridae: Gerrinae) endemic to Omura Bay, Nagasaki, Japan. Canadian Entomologistst: online first (Link)
驚きの日本産アメンボの新種が記載されました。九州は長崎県大村湾で発見されたその名もナガサキアメンボAquarius haliplous Yasunaga, Asanabe & Nagashima, 2018です。形態はアメンボそしてその亜種アマミアメンボにそっくりですが、オスの触角第2節が第4節より短いこと、触角第1節が中脚跗節第1節よりわずかに短いこと、などから区別が可能なようです。しかし何より興味深いのがその生息環境で、主に海域においてシオウミアメンボ、ウミアメンボ、シロウミアメンボ、ケシウミアメンボなどと同所的にみられるようです。アメンボ科は海域に進出した特異な昆虫の一群としてよく知られていますが、それらはいずれもウミアメンボ亜科で、アメンボ亜科での海産種はきわめて珍しいものです。アメンボ類が海洋へ進出した経緯や仕組みなどの進化的背景を考察する上でも重要な種であると言えます。論文は単なる新種記載論文にとどまらず、卵から成虫までの各成長段階における形態や生態に関する知見など、膨大な情報量の素晴らしいもので大変感動的です。
新聞記事にもなっていました→長崎新聞リンク
おそらくこういう場所でアメンボを採っても「なんだアメンボか〜」と気づかない人が多いのではないでしょうか。私もそうです。というかこのあたりの海域でウミアメンボ類の観察をしたこともあるので、この新種が私の網膜に映っていた可能性はきわめて高いです。そうした中で、詳細な観察に基づいてこの種が新種であることを発見したのは大変すごいことだと思います。何事も思い込みは禁物です。しかし日本の生物多様性もまだまだ奥が深いです。。
なお、長崎県ではシオアメンボは条例により採集が禁止されていますので、この新種の観察の際には注意が必要です。→平成29年度長崎県未来につながる環境を守り育てる条例に基づく希少野生動植物種保存地域指定別表PDF