オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

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先月調査に行った時に出会った素晴らしい湿地帯の風景です。

ところでインターネット上に出す環境写真にはいくつか注意する点があります。なぜかというと、そこに希少種が多くいる場合、その生息地が悪質な愛好家や業者に特定されることで、乱獲がなされるおそれがあるからです。希少種関係の仕事においても、生息地の情報というのは最高レベルの守秘項目です。

したがって希少種の生息地が特定されるような環境写真をインターネット上に出さないよう注意しないといけません。まずそもそも、乱獲の恐れのある超希少種の生息地の写真は基本的に出さない、ということがあります。それから次に、どういう写真が良いかというと、山の稜線が写らないこと、鉄塔・橋梁・ガードレール・護岸が写らないこと、河川名や市町村レベルでの地名を書かないこと、なんかが基本線になります。自分が捕獲者だったら何を手掛かりにするかということを考えると良いです。上記の写真は先に記した重要な情報が何も入っていないので、行ったことがある人を除いては場所の特定が不可能です(※偶然みつけてしまうということはあるかもしれません。ちなみにこの湿地帯にも超希少種はいません)。上記の写真は、湿地帯経験の多い人なら、「確かに良いけど、わりと各地にある良い湿地帯」、と感じるのではないでしょうか。また、ツイッターなどでは設定によっては位置情報が一緒にツイートされることがありますし、デジカメによっては緯度経度情報がファイル内に含まれて保存されるので、環境写真をインターネット上に放流する際には、このあたりのチェックも必要です。あとはその場所は秘密にしていても、そこに行くまでの移動経路なんかを明らかにしていると、そうした情報もヒントになるかもしれません。ということでインターネット上での環境写真の公開については、上記の点に気を付けることで、ほぼ問題はないと思われます。

と、ここまで読んで、そんなに面倒ならそもそも環境写真をインターネット上に出すべきではないのでは?という意見もまた、あるかと思います。でも絶対に出さないというのは愛好家としては息苦しいし、何より現実的ではありません。出すなら特定されない写真を、と言うのが現実的だと私は思っています。それから、私が素晴らしい湿地帯の風景を出す理由として、特に「これが良い湿地帯だ」というのを多くの人に知ってもらいたいという思いもあります。世の中の大多数の人は湿地帯に良いも悪いも感じないそうです。これは良い湿地帯だ、ということがわかる人が増えれば、良い湿地帯が消滅の危機にある際に、これを失ってはいけないのではないか、ということに気付いて、何らかの保全アクションにつながるかもしれません。そうして良い湿地帯がこの世から消滅することを少しでも防げるのではないかと思っています。そういう意味で「素晴らしい湿地帯の風景」をインターネット上に出すことに保全上の意義はあると、考えています。

インターネット上での環境写真の公開においてはもう一つ大きな課題があります。それは観察会等の活動風景をインターネット上で報告する時どうするか、ということです。写真以前に、どこどこでします、と具体的な場所まで書かざるを得ないことも多く、悩ましいところです。私も年間10~20回ほど観察会講師業をしていますが、相談されると悩みます。気を付けている点としては、まず、超希少な種が採れた、ということは書かないということです。インターネット上には写真や情報としては無難な種を出しておくのが良いだろうと言っています。また、自分が講師で行った時に超希少な種が採れてしまった時には、参加者に対してこれこれこういう理由でインターネット上には出さないでね、と解説する場合もあります。それでも不特定多数の方が参加する観察会では、限界はあります。別の考え方としては、そもそも観察会を超希少種がいるところでは開催しないということ、あるいは法令で侵入や採集が禁止されているところで特別に許可をとって開催すること、などが考えられます。このあたりを頭にいれておくことで、観察会の様子をインターネット上で不用意に公開したことを端緒とする希少種乱獲問題は、大部分が回避できるものと思います。

まあ究極的には、乱獲や密猟をするような悪い人がいなくなれば良いのにね~というところなんですが、それは不可能なんだなということが年を取ってきて、わかってきました。残念なことです。

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ということで最後にもう一枚、素晴らしい湿地帯の風景です。こういう湿地帯が素晴らしいのです。

 

<付録>

悪質な乱獲者による被害を防ぐためのインターネット上に環境写真を放流する上でのチェックリスト

□ 山の稜線が写っていないか

□ 鉄塔・橋梁・ガードレール・珍しい護岸などが写っていないか

□ 市町村名や詳細な河川名を出していないか

□ ツイッターなどで位置情報が投稿される設定になっていないか

□ 写真に緯度経度データが含まれていないか

□ 途中経路の情報などは出してしまっていないか

□ その場所に乱獲されるおそれのある超希少種が生息していないか

※追記。超希少種のそのものの写真公開は、場所さえ特定されなければ特に問題ないと思います。その種がその地域にいる、ということは図鑑等文献上は明らかになっている情報なので。周知の情報か、そうでないかも、一つの判断基準になります。