オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

論文

Sugiura, S. (2020) Active escape of prey from predator vent via the digestive tract.  Current Biology: DOI: https://doi.org/10.1016/j.cub.2020.06.026

水生甲虫界が驚く衝撃の論文が出ました。主役はマメガムシです。マメガムシと言えばわりあいに普通にいる黒い、変な形をした止水性の小さなガムシですが、このマメガムシにすさまじい必殺技があることがわかりました。なんとマメガムシはカエルに食べられても死なずに、かなりの確率で生きたまま総排出孔から出てきて生還するということが報告されたのです。衝撃です!(ついでながら「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」も引用されていてうれしいです!)

普通、小さな昆虫類はなるべく「食べられないための必殺技」を磨いています。しかしマメガムシは「食べられた後に助かる必殺技」を磨いていたのでした。これは動画をみたら話が早いですね。論文の内容が一撃でわかる動画がこちらです↓

www.youtube.com

はい、すごいですねー・・。論文では5種類のカエル(トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ヌマガエル、ツチガエル、二ホンアマガエル)に食べさせていますが、生還率は多少異なるものの、すべての種でマメガムシは生還しました。その一方で他のガムシ類ではいずれも生還はしなかったということで、この特性がマメガムシ独自のものであることがわかります。また、マメガムシはかなり積極的に消化管内で移動しつつ刺激を与えて自らの排出を促している可能性も指摘しています。すごすぎです。

詳細は神戸大学のプレスリリースが、イラストも写真も豊富で大変わかりやすいので、こちらを読むのがおすすめであります↓

www.kobe-u.ac.jp

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ということでマメガムシです。この変な形、確かに違和感はありました。

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頭からお尻にかけてきゅっと細くなり、横から見ると半円形と言いますか、頭部と前胸背部が一体となった美しい弧を描くのが特徴的で、また各脚がきゅっと収納されると言いますか、なんとも言いようがない個性的な種です。ちなみに泳ぎは超速です。しかしまさかこれほどの必殺技があるとは思いませんでした。今後観察会で現れたらこのネタを使わせてもらいます。ちびっこは大好きなネタと思われます。皆さんもマメガムシを見かけたらぜひ、この必殺技のことを思い出して下さい。

身近な湿地帯生物にもまだまだわかっていないことがたくさんありますね!