オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

カマツカ

唐突ですがカマツカの話です。実は私はカマツカが好きなのです。

もはや国民の誰もが知っていると思いますが、念のため、日本産カマツカは2019年にこの論文によって、カマツカ、ナガレカマツカ、スナゴカマツカの3種に分類されました。唐突ですが3種を紹介します。

 

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カマツカ  Pseudogobio esocinus (Temminck and Schlegel, 1846)

 

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ナガレカマツカ Pseudogobio agathonectris Tominaga & Kawase, 2019

 

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スナゴカマツカ Pseudogobio polystictus Tominaga & Kawase, 2019

さて、唐突と書きましたが、実は今年になって東京都レッドデータブックの調査お手伝いをしている関係上、東京都内のスナゴカマツカの現状調査などをしています。それで改めてカマツカ3種を見比べていたのでした。

残念ながら東京都内ではカマツカ(関東地方では国内外来種)もしくはその交雑と思われるものばかりで、在来のスナゴカマツカの純系は今のところみつかっていません。東京都のみならず、東日本に自然分布するスナゴカマツカは、国内外来種カマツカとの交雑により全域で危機的状況なのではないかと思います。このあたりはきちんと調査して、保全すべき集団をみつけて保全を進めていく必要があるでしょう。

上のスナゴカマツカは関東地方のとある河川のもので、純系の集団であることが確認されています。カマツカとはずいぶんと違います。私が幼少時に多摩川(秋川)や相模川で採っていた「カマツカ」はすでにスナゴカマツカではなくカマツカ(あるいはカマツカよりの交雑集団)だったことがよくわかりました。実際、当時の秋川にはすでに国内外来種ムギツクがいましたし、多摩川には国内外来種ツチフキがいましたし、相模川には国内外来種ゼゼラがいました。琵琶湖からのアユの放流に伴ってカマツカも放流されてしまったと考えられていますが、それにより在来のスナゴカマツカが絶滅してしまうということは当時はあまり考えられていないことでした。身近な淡水魚においてもわかっていないことはまだまだたくさんあります。そういうことがわかってきているので、とにかく破壊しないよう、放流はしないようにしないといけません。ちなみに本家カマツカについても地域ごとに異なる固有の遺伝的特徴をもち、それぞれが保全単位であり水系をまたぐ放流は問題です。カマツカからもいろいろなことが見えてきます。