オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

ここ数日はヒルについて勉強していました。福岡県レッドデータブック改定作業に伴うお勉強です。ヒルと言えば血を吸う生物という印象が強いですが、人類から積極的に吸血するヒルはかなりの少数派で、福岡県内では水生のチスイビルと陸生のニホンヤマビルの2種が代表的です。しかしながら、いずれの種も現在の福岡県内ではほとんど見かけることはありません。

チスイビルは2023年現在、私が調べた限りでは県東部(豊前地域)に3ヶ所の生息地を確認しているのみです。その他、県北部、県南部で最近も見たという情報はあるのですが、確認できていません。かつては各地に普通にいて、水田に入った際に血を吸われたという経験のある人は多いことから、人知れず絶滅に瀕している可能性があります。ウマビルやセスジビルなど、模様のある大型のヒルと混同されていることもあり(これらの種類は血を吸いません)、今後きちんと調べていく必要があるでしょう。

ということで福岡県産のチスイビル(とコシマゲンゴロウ)です。現在私が確認している県内のチスイビルの生息地は、環境が良好なため池(2ヶ所)と水田(1ヶ所)です。背面に5条の縦条模様があること、腹部に黒斑模様がないこと、などで近縁他種と区別できます(あと、血を吸いに泳いでやってくるのも大きな特徴です)。

 

もう一方のニホンヤマビルですが、こちらは最近本州や九州南部などでは増えており問題化している地域もある陸生の吸血ヒルです。ところが福岡県では長らく確実な情報がありません。こちらの文献↓

www.jstage.jst.go.jpによれば沖ノ島英彦山での記録があるようですが、特に英彦山では明治22年(1889年)に英彦山で採集された標本が東大に残っているものの、1946年以降に絶滅した可能性が示唆されています。私も英彦山は何度か調査に行ったことがありますが、見たことがありません。

 

今回の福岡県レッドデータブックについて、専門の淡水魚類の一部(魚類分科会)とトンボ以外の水生昆虫類(昆虫類分科会)については前回に続いて委員として担当しているのですが、加えて、一部の淡水性貝類(貝類分科会)、一部の水生無脊椎動物甲殻類その他分科会)、さらに陸生の無脊椎系動物(クモ形類その他分科会)も担当することになり(人材不足!)、大変です。県レッドは10年ごと改訂なので、10年後は若い人たちに任せていきたいです。レッドデータブックを見て、これは調べてみたいなあ、と思うような内容になると良いのですが。生物多様性保全を効果的に進めていく上で、生物各種の生息状況の変化や分布実態を把握していくことは、基礎的データとしてきわめて重要です。