オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

今日は午前中から北九州の博物館にいってました。目的は2つあって、1つは行徳コレクションの水生昆虫リスト作りの続き。もう1つは昆虫学会九州支部のシンポジウムを聞きに。行徳コレクションのほうはほっておいたミズスマシとコガシラミズムシの同定再確認。個人的には日本産水生甲虫のなかでかなり難易度が高いのがミズスマシ属とヒメコガシラミズムシ属。この人たち、分類学的な定説すら怪しいんで困ってしまいます。んで、九州のこの属といえば知る人ぞ知る、クロホシコガシラ問題とニッポンミズスマシ問題。某N先生と某S先生が激しく議論を闘わせた日本の水生甲虫界屈指の大問題であります(え?違う?)。で、この問題についに結論を見出した!とかいうことは私ごときには残念ながら出来なかったのですが、行徳コレクションには明らかにマダラコガシラとは別のマダラ模様のコガシラがありました。これが多分クロホシコガシラとなっているものなのでしょう。N先生が認めたクロホシはこの行徳氏が採集した福岡県吉井町のものとのことですから、同時に採れたものなのかもしれません。こういう枝葉的な、プロの分類学者がやらないようなところは私のような学者が取り組むべき問題なのだろうか、とか思いながら標本箱に戻しておきました。
さて、シンポジウムの方は、九州北部での希少昆虫の保全について。メインは福岡東部で問題になっている希少種のいる貴重な池が高速道路の建設によりつぶれるかも、という話についてです。まあ、色々とお粗末な背景ではありますが(アセス調査をろくにしていない・・そんな馬鹿な・・)、とりあえず問題が表面化した以上は、このご時世ですし、高速道路を建設する側は真摯に取り組むべきでしょう。キボシチビコツブゲンゴロウ、チュウブホソガムシ、ミズスギナをむざむざ絶滅させたら末代まで語り継がれることでしょう。講演は、色々と一緒に取り組んでいる、神奈川のKARUBE氏とGYO部が行って下さいましたが、大変に興味深く、面白い話が満載でした。うなずく部分も多かったです。特に心に残ったのは、「昔はいたんだけどねー」というお爺さんに我々がなってはいけないのではないか、とのGYO部顧問のお話。全くその通りです。昔の環境は良かったなどと無責任に言える時代ではありません。今の環境を次の世代につなぐのは今を生きる人の任務ではないでしょうか。その場の価値観だけで生きる時代はもう終わりにしなくてはいけないと思うのです。

スジゲンゴロウHydaticus satoi。昔はたくさんいたゲンゴロウの代表。なぜいなくなったのか?その疑問に明確に答えることのできる科学者はいないのです。もはや検証することもできません。人知れず日本から絶滅してしまったのです。